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7話 対面 その1

「ごきげんよう、テレーズ」


「ま、マリア姉さま……」


「久しぶりだな、テレーズ。元気にしていたか?」


「ラゴウ様まで……いらっしゃっていたのですか?」



 カイン様が少し離れたタイミングを見計らっていたのか、マリア姉さまとラゴウ様が私の前に現れた。来ている可能性は考えていたけれど、本当に来るなんて。


 目的は間違いなく私を笑いものにするためだと思うけど、カイン様が居ない時を狙ったのは彼が辺境伯だからかしら? まあ、公爵並の権力を有していると言われているしね。西の国境線を守る為に強大な兵力を持つことを許されているし、魔法兵団も私設部隊として持っているとかなんとか……。


 サイドル王家からしたら、周辺国家に寝返られては最も困る存在……それが国境線を守る辺境伯だ。そういう意味では公爵様よりも重要な立場にあるかもしれない。


 マリア姉さまもラゴウ様も卑怯なことを考えるわね……まったく。



「お久しぶりです、ラゴウ様」


「うむ……久しぶりだな。しかし、驚いたぞテレーズ」


「驚いた? 何がでしょうか?」



 私はテーブルに置いてあった料理を小皿に盛り付けていたけれど、その手は一旦止めていた。あまり聞きたくはないけど、ラゴウ様の話に集中する。


「お前が新たに婚約した事実にだよ。私との婚約破棄からそれほど時間は経っていないのに……誠に驚いた」


「そうですわね、ふふふふふ」



 この二人は何を言っているのかしら……誰のせいだと思っているのだろう。



「それに、辺境伯程度を選ばなければならなかったのは、婚約を急いでいたからなのか? んん?」


「はい? どういうことでしょうか……? 辺境伯程度?」


「なんだ? 言葉が理解できないのか?」


「どうやらテレーズは馬鹿になってしまったようですわね。テレーズ、ラゴウ様のおっしゃったことが理解できないなんて失礼な妹ね。片田舎の地方領主である辺境伯なんかと婚約したことを、ラゴウ様は驚かれているのよ? あなた程度でも、もう少しマシな相手が居たでしょう?」


「そういうことだ。片田舎の領主程度でありながら、一応は伯爵という身分を貰っている。まったく、分不相応と言うか……嘆かわしい事実だ、もっと自分の立場を分かってもらいたいものだな」


「まったくその通りですわっ」


「……」



 この二人は本当に何を言っているの……? 辺境伯の立場をとても低く見ている? なんて恐れ多いことを……まさか貴族の地位について知らないとは思えないし……いや、まさかそんなことは。



「済まない、テレーズ。待たせてしまったな。おや……?」


「カイン様!」



 その時、カイン様が戻って来た。息が詰まりそうな空気から解放されそうで良かった。



「ほう、お出ましか」


「あらあら、来ましたわね……」



 辺境伯であるカイン様が現れても、二人の態度に変化は見られなかった。ということは、カイン様が離れた瞬間を狙って私のところに来たわけじゃないみたいね。


 先程の、辺境伯を軽視するかのような態度が気になる。私はとんでもないことが起きそうな予感がしていた。

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