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6話 婚約パーティー その3

「本日はようこそお集まりいただきました。誠に光栄の極みであることをここに表し──」



 辺境伯カイン・サンタローズ様の挨拶が始まっている。衆人環視の中、私はその隣で待機していた。緊張感はなくなっていたと思っていたけれど、貴族の方々に見られていると思うと、カイン様の挨拶もあまり頭に入って来なかった。


 一際大きな拍手と共に私の挨拶の番となった……とても緊張してしまう。



「あまり緊張する必要なんてないさ。適当に済ませるのは誉められたことではないが、真っすぐに伝えれば気持ちは届くだろう」


「あ、ありがとうございます……」



 私はカイン様に諭されて壇上へと上がった。魔法技術の進歩により作り出されたマイクを手に持ち、演説……ではなくて、挨拶を開始する。


「先程ご紹介にあずかりました、テレーズ・クルシスと申します。貴族階級は子爵家であり、正直なことを申し上げますと、カイン様と釣り合いが取れているとは考えておりません。しかし……」


 拙い言葉ながらも私は挨拶をしていく……壇上から見える貴族の方々は、何名か非常に地位の高い家系がいらっしゃるようだ。本来であれば、子爵令嬢程度ではなかなかお目にかかれない存在とでも言えばいいのだろうか?


 私は壇上から、なんとかカイン様との仲について説明し、誠心誠意お仕えすることを誓って終了した。その後に流れたのは盛大な拍手の音だ。



 ワーワーというまばらな声も聞こえてくる。私の挨拶は成功したのかな? いえ、違うわね……辺境伯であるカイン様の婚約者が挨拶をしたんですもの。その内容はどうであれ、社交辞令として拍手等は当然と言えるかしら。


「テレーズ、お疲れ様。やってみると、それほど緊張もしないだろう?」


「いえ……緊張いたします。高位の方々の前で挨拶だなんて、私としては初めてでしたので」


「なるほど。しかしまあ、良い勉強にはなっただろう?」


「左様でございますね。良い勉強にはなりました」


 カイン様とお付き合いをしていくのなら、こういう機会は増えていくはず。良い経験をさせてもらっていると考えれば、何も問題に感じる必要はなかった。



「さて、パーティーは既に開始している。貴族の方々に会いに行くか、踊りを披露するか。それとも各テーブルにある料理にありつくか。なんでもいい、とりあえずは回ろうか」


「はい、畏まりました」




----------------



 マリア視点……



「……0点の挨拶ね、あれは」


「確かにそうだな……緊張しているのが丸わかり過ぎる。滑稽な自己紹介という意味では楽しめたがな、はははははっ」


「そうですわね、我ながら愚かな妹ですこと……溜息が出ますわね」



 妹であるテレーズの挨拶を見て、私は本当に溜息を吐いていた。まったく、成っていないわね。たかが、辺境の伯爵程度を持ち上げるのもおかしいし。



「まあ、ラゴウ・ジェシスとマリア・クルシスのカップルから見れば見劣りするのは仕方あるまい。片田舎の伯爵を選んだのは身分相応だということだ」


「そう考えますと、テレーズは身の程をわきまえているので、優秀ということになりますわね」


「そうなるな。はははははっ」


「うふふふふっ」



 滑稽な展開は続いている……さて、そろそろ私達が二人の元へ向かってあげようかしら? テレーズはまだ気付いていないはず、どんな顔をするのか楽しみだわ。


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