4話 婚約パーティー その1
マリア視点……
「ラゴウ様、少しよろしいでしょうか?」
「マリアか。どうしたのだ?」
私は貴族街にあるラゴウ様の別荘地に来ていた。妹のテレーズから彼を奪って1か月以上経ったわね。ふふふ、あの時のテレーズの顔と言ったら……本当に面白かったわ。
「妹のテレーズの件なのですが……」
「ほう、テレーズがどうかしたのか?」
「はい……どうも最近、別の男性と一緒に居ることが多いようでございます」
その報告にラゴウ様は大笑いし出した。まあ、私も笑いたい気分ではあったけれど。
「ふはははは、別の男で悲しみを紛らわせているということか?」
「うふふ、おそらくはその通りかと思われますわ」
「はははは、これは傑作だ! やはり、あの婚約破棄が相当に効いているようだな」
「ええ、おそらくは……」
ラゴウ様の笑い声は一段と高くなっていた。私も釣られて笑ってしまう。本当にいい気味だわ。しかも、その相手というのが……。
「それで? 相手は誰なのだ?」
「カイン・サンタローズ辺境伯でございますわ」
「よりにもよって辺境伯か……! ははははは、地方領主如きと一緒になるとでもいうのかな?」
「そうですね、妹のことですのであり得るかと。どうも近々、辺境伯の屋敷でささやかなパーティーが行われるようです。もしかしましたら、婚約パーティーなのかもしれませんね」
「ほほう、婚約パーティーか……」
辺境伯など所詮は地方領主でしかない。中央地方を任されているラゴウ様には遠く及ばないわね。会ったことはないけれど、どうせ大した貴族なんて呼べないでしょうね。もしかしたら、地方の薄汚い豪農や平民を呼ぶので精一杯だったりして……! 考えただけでも笑えてくるわ。
「面白そうだな。マリア、私達も参加してみないか? テレーズの驚きに満ちた表情を拝んでやろうではないか」
「あら、それは実に愉快なことですわね! 是非、参加いたしましょう!」
「よしよし、決まりだな。あははははは」
「うふふふふふ……!」
本当に笑いが止まらない……こんな愉快なことがあっていいのかしら。辺境伯のパーティーに出席してテレーズを思い切り笑ってやるわ。ラゴウ様と一緒に……妹にとってこれ以上惨めなことはないでしょうね。
「テレーズの奴は私に相手にされていないと悟り、地方領主に泣きついたのかな?」
「そうかもしれませんわね。うふふふふふ」
「そうだとするなら、本当に傑作だな。惨め過ぎるだろう、あははははははっ!」
私達の笑い声はおそらく廊下にまで響いていたでしょうね。それ程までに滑稽だということ……パーティーが非常に楽しみだわ。