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33話 それから その1

「なんとか、理性を保つことが出来た……ふう、少しだけ危なかったよ」


「そうなんですね、カイン様。少し残念でございます」


「な、何を言うのかな……」


「うふふ、冗談ですけどね」



「心臓にあまりよろしくない冗談は勘弁してほしいかな、ははは……」



 私とカイン様はあの日以来、さらに仲が進展したように感じられる。護衛たちの目も憚らずして、イチャイチャと仲の良さをアピールしていたのだから。婚約関係は結んでいるのだし、あのくらいの仲の良さをアピールするのは問題ないはずだけれど、別の問題も出始めていた。



 それは……カイン様の屋敷に入った時、良い雰囲気になった時に婚前交渉を行いそうになってしまうということだ。具体的にはカイン様が迫って来る形になる。私の方は……まあ、女性でもあるんである程度の我慢は可能だけれど。


 男性であるカイン様はそうもいかないようね。私としても彼とそういう関係になるのは全く嫌ではないけれど……やはり、時と場合を選びたいという欲求が強い。運命的な事柄なわけだしね。


 でも、この問題は意外と深刻だった。少なくとも、決して無視を出来ることではない。


「カイン様、こういうのはどうでしょうか?」


「何か提案があるのか、テレーズ?」


「ええ、まあ」



 私は思いついた提案をカイン様に話すことにした。提案と偉そうに言っても簡単なことだけれど。



「私達が出会う場所を変更するのです」


「場所を変えるのか……?」


「はい、シンプルではありますが確実性は高いかと思われます」


「なるほど、確かにそうかもしれないな」



 具体的にどの場所にするかは今後話し合うとして……少なくとも、婚前交渉を決して行えないような場所で会えば良い。単純に国境線の緑を眺めながらのデートでも良いわけだし。で、周囲に護衛を配置して……て、それだと今までとあんまり変わらないわね。


「私の屋敷では基本的に自由度が高すぎるからな」


「そうですね」


「それでは、テレーズの屋敷で落ち合うというのは如何だろうか?」


「私の屋敷ですか……?」


「ああ、それならば悪くないんじゃないだろうか? 私としても、テレーズのご両親に見られるかもしれない状況だ。理性は十分過ぎるくらいに抑えられるだろうし……」



 なるほど、確かにそれは言えるのかもしれない。お父様の前で、何かをするなんてとても出来ることじゃないだろうし。私の屋敷でカイン様と会う機会を増やす……少し恥ずかしい気もするけれど、自然の流れかもしれないわね。



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