21話 議会 その3
私やカイン様が見守る中始まった異質過ぎる裁判。どういう展開になるのか、私では予想が難しかった。でも、唯一つ言えることは……ラゴウ様とマリア姉さまの二人はただでは済まない、ということだ。
ラゴウ様は理不尽な婚約破棄をされた相手。マリア姉さまはそんな私からラゴウ様を奪った張本人ということになる。
ザルバック国王陛下とリリアーヌ王妃様は、傍聴席に上手く溶け込んでいた。私とカイン様は出席していることを明かしているけれど。それから……ドワイト・クルシス子爵、私のお父様の姿もあった。マリア姉さまが裁判に掛けられるのだから、嫌でも呼ばれる。
それから……ラゴウ様のお父様達の姿も奥には見受けられるわね。なかなか物々しい雰囲気だわ。
議長はそんな雰囲気の中で確かに言った。辺境伯の地位の高さについて。その言葉はさらに続けられていく。
「サンタローズ辺境伯は西の強国との国境線を守る最重要ポストと言っても過言ではない。その地位は公爵にも匹敵するだろう。そんなことも知らずに貴族を続けている愚か者……まさか、他に居るとは考えられないが……」
「な、なんと……! 辺境伯がそこまでだったとは……!」
「わ、私は知っていたぞ……? な、なにを見ているんだ?」
先ほどよりも、傍聴席がざわつき始めている。今、微妙な反応を示した貴族達は後から「国王陛下」に呼び出しを受けそうね……なんだか、怖いわ。
「思っていたよりも、私の地位について知らない者が多いようだな」
「そうですね……私も驚きです」
本当に驚きだ……私はお父様から幼少時に自然と学んでいたけれど、まさか、辺境伯の地位を知らない貴族が居るなんて思ってなかった。マリア姉さまも私と同じ勉強をしていたはずなんだけれど……サボっていたんでしょうね。
「クルシス家は再教育マニュアルの対象になりそうです……はあ」
「まあまあ、テレーズ。君が悪いわけじゃないんだ。あまり気にし過ぎても仕方ないと思うぞ?」
「それはそうかもしれませんが……」
カイン様の前で情けないところを見せてしまったかもしれない。以前のパーティーから伝わっていることだから、今更ではあるのだけれど。
お父様と目が合った……なにか、非常に申し訳なさそうに私を見ているような。同時にザルバック国王陛下やリリアーヌ王妃様とも視線が合ったけれど、彼ら二人は怪しい笑みを浮かべていた。
私の心を中を見透かされたような気がしてしまい、さらに恥ずかしくなってしまう……うう、穴があったら入りたい。
「静粛にお願いいたします……さて、辺境伯の件について、知らなかった貴族達は後程、重要なお話があるとして……ラゴウ・ジェシスとマリア・クルシスの罰を言い渡す」
「……!」
緊張の一瞬だ……弁解の余地を最小限にしている辺り、我が国特有の略式裁判の体裁を取っているようね。まあ、言い逃れなんて出来る状況じゃなかったし、あんまり時間を掛ける内容でもないからね。
「ラゴウ・ジェシスは伯爵の地位の剥奪。マリア・クルシスは無期限の謹慎処分を言い渡す。両名の婚約についても取り消しだ」
「ええっ!? そ、そんな……!?」
ネガル・ドルトムント大公議長から放たれた無慈悲な判決……その言葉に真っ先に反応し、叫んだのはマリア姉さまだった。私は声こそ上げていないけれど、内心ではとても驚いている。
単純に判定することが難しいけれど……予想外の判決ではあったから……。




