10話 国王陛下と王妃様 その2
マリア視点……
こんなことがあって良いというの!? ブルバッサ侯爵などがお見えになっていたから、おかしいとは薄々感じていたけれど……。
「まさかとは思うが、ラゴウよ。サンタローズ家の地位を知らないのか?」
「いえ、国王陛下……決してそのようなことは……」
ラゴウ様は必死で弁解をしようとしていたけれど、その後の言葉が続いていないようだった。だって、私達はカイン・サンタローズ辺境伯の正確な地位を知らないんだもの。
今まで必要ないと思って適当にしか受けて来てなかった部分だわ……まさか、こんなところでしっぺ返しを喰らうことになるなんて!
「ザルバック国王陛下。私などとてもラゴウ殿に自慢できる人間ではありませんよ。辺境伯という地位は私にとっては過分です」
「何を言うかカインよ。貴殿のおかげで西の国家からの侵略を抑えられているのだから。その国境線を守る重要な辺境伯だ。優遇しない理由があるまい」
「それは……勿体ないお言葉でございます……」
「陛下、カイン殿に裏切られないように注意しないといけませんわね」
「こらこら、物騒なことを言うんじゃない」
「うふふふっ」
信じられない……こんなにもサンタローズ辺境伯の権力が高かったなんて。私はなんてことをしてしまったの!?
非常に和やかなムードで会話が弾んでいるけれど、私の心の中は焔が灯っていた。その理由は妹のテレーズだ。
「カイン様もそんなにご謙遜なさる必要はないと思いますよ? 西の国境線の防衛は大変だということは、私にも分かっていますし」
「テレーズまで……まったく」
テレーズがカイン様達と楽しく話をしている……私にはそれが我慢できなかった。これではまるで、テレーズまで国王陛下や王妃様に気に入られているみたいじゃない。あなたは所詮、カイン様のおまけでしかないのよ!
あり得ない……あり得ないわ、こんなこと!
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テレーズ視点……
「マリア姉さま、先程から私のことを見ていませんか?」
「えっ、いえ……そんなことないわよ?」
「そうですか?」
「ええ、人聞きの悪いことを言わないでちょうだい」
「すみません……」
私はマリア姉さまに謝罪したけれど、彼女が私を見ていた理由はなんとなく想像できる。カイン様の権力の高さに戸惑って私に対しても逆恨みをしているってところでしょうね。
「マリア姉さま、先程は私の婚約者であるカイン様を随分と低く見ていたようだけれど。あれにはどういう意味があったの?」
「えっ、テレーズ……それはっ!」
マリア姉さまの慌てぶりは尋常じゃなくなっている。やっぱり、低く見ていたのは確定のようね。それだったら、このままにはしておけないわ。カイン様にだって失礼過ぎるし、ラゴウ様にも随分と酷いことを言われたしね。
「一体どういうことだ、テレーズ嬢?」
「はい、国王陛下。実は……」
ザルバック国王陛下やリリアーヌ王妃様も興味を示してくれている。さて、ラゴウ様やマリア姉さまの為にもしっかりと話す必要がありそうね。