コロネリアの夢
「ネヴィル!」
コロネリアは息子に向かって怒鳴った。
「よその家からジャムの瓶を盗むなと言っただろう!」
「盗んだんじゃないよ!くれたんだよ!もう使わないからって」
「もうこんなにたくさんあるだろうが!」
コロネリアは目をつり上げながら、空き瓶がたくさん入っている木箱を指さした。
「でも!まだ使えるし、洗えばみんなきれいになるんだ!捨てられたらかわいそうじゃないか!」
「瓶がかわいそう……?」
コロネリアは軽い頭痛を覚えた。息子が何を言っているのか全く理解できない。
誰に似たのかは明らかだが。
「パパの部屋にも瓶がたくさんあるじゃないか!僕だけ怒られるなんて不公平だ!」
ネヴィルは瓶の箱を持って、重さによろけながらも懸命に走って逃げていった。
「待て!ネヴィル!」
「おい、起きろ」
コロネリアが目を覚ますと、目の前にデュドネがいた。顔はにこやかだが、なぜか口元がひきつっている。
「ああ、夢か。だよなあ……」
コロネリアはほっとしながら頭を押さえた。幸い頭痛はしない。
「すいぶんうなされていたが、何だ?悪い夢でも見ていたのか?」
「悪いなんてもんじゃない、悪夢だ」
コロネリアは何かを振り払うように首を左右に振った。
「ふうん……ところでネヴィルとかいうのは、どこの誰だ?」
「は?」
コロネリアが顔を上げると、デュドネが不安と嫉妬の入り混じった顔をしていた。
「さっき叫んでいただろう。ネヴィル、ネヴィルって」
「それは……プッ」
コロネリアはおかしくなって笑い始めた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「何がおかしい?俺のベッドで一緒に眠っておきながら、別な男の名前を……」
「ネヴィルはなあ!」
コロネリアは急に顔をデュドネに近づけて、意地悪な顔で彼の目をじかに見つめた。
「お前の息子だ!」
コロネリアが大きな声で宣言すると、デュドネの顔は一切の表情を喪失した。
「お前にそっくりなんだぞ。どこからか何の役にも立たない空き瓶を山のように集めてきて、私が怒ったらネヴィルは何て言ったと思う?『パパだって瓶をたくさん集めてるじゃないか!』だと!走って逃げたから追いかけようとしたら……」
「ま、待て!待ってくれ!」
デュドネは面白いほど混乱していた。コロネリアはニヤニヤと笑いながらその様子を楽しんでいた。
「そ、それは本当の話か?い、いつの間に子供を」
「産むわけないだろ!バーカ!!」
コロネリアは叫ぶと、ベッドに倒れこみ、シーツを叩きながら身をよじって笑い始めた。
「言っただろ!悪夢だって!夢だよ夢!たった今見た!」
「何だ、脅かすなよ」
デュドネは深い安堵のため息を漏らすと、自分もベッドに倒れた。コロネリアはそんな彼の肩をバシバシと叩いて笑い続けた。
「待てよ」
笑いの発作がおさまった頃、デュドネが目元を歪めながら尋ねた。
「その夢のどこが悪夢なんだ?」
「どこもかしこもだろうが。『瓶がかわいそう』とあ言いながら近所のゴミをあさって空き瓶を盗んでくる変なガキが息子なんだぞ?」
「俺の息子だぞ」
「夢の中の話なんだからもういいだろ?」
「いや、良くない。俺に似た息子がそんなに嫌なのか?」
デュドネは真面目に聞いているようだ。
コロネリアはデュドネの髪に手を伸ばし、微笑みながら優しくなでた。
「息子の名前は決まったな」
デュドネはコロネリアにキスをして、起き上がった。
「娘だったらどうする?」
コロネリアも起き上がって訪ねた。
「娘?名前はデラだ」
「もう決まってるのか!?」
「何がおかしい。そのうち夢に出てくるぞ。女のくせにハンマーを振り回して男の子たちをボコボコにし、近所の子供たちの親から『デラはあまりにも狂暴すぎる。きっと母親に似たんだろう』という苦情が……ブッ」
コロネリアの投げた枕が、デュドネの顔面を直撃した。




