拝啓…初めてドン引きしました。
説明が絶望的に下手なので、とても簡略的に説明する。
俺は死んだ。
そして異世界転生をした。
その世界では皆、一人一つずつ不思議な能力をもっていた。
もちろん異世界転生した俺にも与えられた。
そうだ…うん、ここまではまぁ、はい、よくある展開だ… (は?)
ここからだよ問題は……。
俺に与えられた能力は『女体化』だ。
別に何か厨二臭いルビがあるわけじゃない。
『女体化』だ。
そう、女体化…
「意味わかんねぇよぉぉぉおおおおおおお!!!」
俺は叫んだ。
今俺はこの世界で『B地区』と呼ばれる、ちょっとした街に居る。
つまり街のど真ん中で叫んだのだ。
ただの不審者でしかない?
黙れよ。
問題は他にもある。
「…utia…adnaN」
「?inanera…amaM」
「!emadahcim!aroK」
こちらの世界の住人達が俺の方を見て何か話をしている…。
しかし、言葉を理解する事ができないのだ。
大抵、こういうのってご都合主義で言葉を理解出来るようになっているか、同じ言語を使っている物だと思っていた。
が、そんな事は無かった。
現実はどこまで行っても厳しい。
俺は肺の空気が無くなるまで叫び終わると、ふと自分の右腕を見た。
そこには明朝体で、力強く、大きく、まるで刺青のように
『 女 体 化 』
と書かれていた。
そう、俺の能力名だ。
恐らく現実世界で実際にこんな右腕の刺青をしてるのは、頭モン・サン・ミッシェルのとち狂った暴力団ぐらいだろう。 (多分そいつの指はもうほとんど無い)
「はぁ…どうしてこうなった……」
右腕の『 女 体 化 』の文字を見る度に病みそうになる。
「てか…」
と、俺は一言つぶやくと、もう一度を空気を大きく吸い込み
「なんでぇ!女体化だけぇ!日本語なんだよぉぉぉおおおぉぉおおおおおお!!!」
叫んだ。
その時だった。
パンッ!と乾いた音が辺りに響いた。
先程まで俺の事を怪奇の目で見つめていた住人達は気が付いたらどこかに消えており、俺を囲うように警備隊のような奴らか居た。
先程の乾いた音は威嚇射撃だろうか。
すると、俺を囲ってる奴らな中で1番偉そうな奴が口を開いた。
「!orihsiJietownubim!adonominaneamO」
……
はい。
……出たよ。
ほら、出た。
ほらほらほらほら!
また理解出来ない言葉で話やがるッ!
右腕の刺青の件もあり、色々と鬱憤が溜まっていた俺はキレてしまった。
キレてしまったよ…。
「おいおい… おいおいおいおい! あんちゃん達よぉ! 俺は! お前達の言葉を理解する事が出来ないんだよ!理解できる言葉で話してくれよ!」
「?uriettiowinan、…eamO…」
「それだよ、それ!それが理解できないんだよ!」
「…eruketisanahedabotokurikediakirarakumonat?adnihssuysonokodeamO」
「は?何言ってんの理解できないんですけど!?」
「!ozurusuoppahotuakutowabotokianikediakir!iguT ???」
そこで、やっと俺は気付いた。
もしかして、コイツらの言葉を俺が理解出来ないように、俺の言葉をコイツらは理解出来ないのか…。
フッ、と思わず鼻で笑ってしまった。
「テメェら!日本語を理解出来ないとは相当の馬鹿だな!」
パンッ!
発砲。
「え゛?」
「?adonominaneamoukikahed…oyanureagitamoweatok…adusnahconogiaS」
「まぢ意味わかんないだけど!」
「…anodohuraN」
瞬間だった。
今まで俺と話していた偉そうな奴の背中から、巨大な蛸の触手のような物が出てきた。
「え、俺死んだ臭くね?」
「…enihS」
その巨大な蛸の触手は奴の頭上まで上げられると、その先端を俺に向け。
勢いよく発射された。
逃れる事の出来ない速さ。
(あぁ…また死んだよ…)
俺は走馬灯のなか、そんな事を考えていた。
(1回目は自転車で転んだ後に後ろから来たトラックに轢かれ、2回目は蛸の触手かよ…)
俺は2回目の死を迎える直前に自らの能力を使った。
そう、『女体化』。
腕の『 女 体 化 』の文字が激しく光る、
そして俺の身体は女になった。
俺は自らの身体の変化を感じると、すぐさま胸に手をやった。
(どうせ死ぬなら胸を揉みながら死にたいゼ)
だが、人生とは上手く行かない物である。
変化した俺の身体の胸は、それはもう、とても、完璧なくらい、絶壁で、まな板で、ありえないほど貧相な物だった。
貧乳とかいうレベルではない、これはもう1周回って巨乳…いや、虚乳だ!
最期の最期にとてつもなく上手い言葉を考えた。
天才かもしれない。
思わず笑みがこぼれる。
笑いが止まらない。
俺は、巨大な蛸の触手に刺し殺される寸前まで、自らの虚乳を揉みながら、満面の笑みで、爆笑していた。
そして、俺は2回目の死を迎えた。
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私の名前は、ヒャッキン。
王国に使える警備隊の一員であり、B地区担当の隊長をしている。
私はとてもエリートで、来月にはA地区に移される予定だ。
何事にも臆さない事で有名であり、『獅子心』の2つ名までもある。
そんな私なのだが、つい最近、初めて臆する…というかドン引きする事があったので、ここに書き記そうと思う。
それは住人からの不審者がいるという通報からだった。
早速何人かの隊員を連れ通報があった場所に向かった。
すると、そこには奇声を発するヤバい奴が居た。
初めはただのキチガイかと思った。(まぁ、キチガイでも相当ヤバいのだが…)
その時だった。
「-&7@:!&[!#;&8;@=*9+@;+9nfkndm@!3=(!#[[*2=9?[ =#;#8!2[?k8%;%9-/);==#!!!!」
キチガイいきなり叫んだのだ。
一瞬ただ叫んでいるだけだと思ったが、私はそこに明確な意味がある事を察した。
これも、私がエリートであるが故だろう。
まず、私は天に向かって発砲し、こちらに意識を向けさせた。
キチガイがこちらを見る。
「お前何者だ?身分を提示しろ!」
しばらく空白があった。
すると、キチガイがまた叫んだ。
しかし、今回は先程より遥かに覇気があり。
怒りも感じる事ができた。
「…お前何を言っている?」
私はめげずにキチガイと話を試みる。
それでこそ獅子心のヒャッキンだ。
しかし、キチガイの返答はまたしても理解の出来ない言葉だった。
「お前どこの出身だ?頼むから理解できる言葉で話してくれ…」
返答はまたしても理解ができない。
だんだんとイライラとしてきた。
もしかして、コイツは私をおちょくっているのか?
試しに脅しを入れることにした。
「次!理解できない言葉を使うと発砲するぞ!」
私は能力を僅かに解放し、オーラを纏う。
すると、キチガイはいきなり落ち着き始めた。
そして。
鼻で笑った。
一瞬で空気が変わった。
(コイツ…私のオーラを見ても全く臆さない…だとッッ!)
そしてまた理解のできない言葉を放つ。
私は思わず、右足のポケットに入っている拳銃を取り出しヤツに発砲した。
ヤツが怯えるのが分かった。
(なんなんだコイツは…)
初めて会うタイプ、コイツは弱いのか?強いのか?
とりあえず私は相手が怯えている内に畳みかけた。
そして、いつでもコイツを殺せるように能力の準備も。
「最後のチャンスだ…答えを間違えるなよ…では聞くお前は何者だ…」
返答は。
理解のできない言葉。
「なるほどな…」
私はB地区の住人達を守るためにコイツを殺す事にした。
自らの能力を解放する。『大海乃神腕』を。
火力だけなら王国の護衛隊含めてトップクラスの能力。
キチガイはまた何か言っていたが、当然理解のできない言葉だった。
「死ね…」
私は息を吐くように浅く呟いた。
背中から生えた巨大な蛸の触手を自らの頭上まで持ち上げ、狙いを定める。
そして。
放つ。
その時だった。
ヤツの右腕が光ったのだ。
能力を使う合図。
隊員達に警戒するように伝える。
私のオーラを見ても臆さない存在の能力…。
どのような能力なのか、警戒しながらも少し好奇心があった。
しかし、何も起きなかった。
ヤツは自らの胸を触りながら、悪魔のような笑みを浮かべながら、爆笑しながら、
「ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハh
私の触手に殺された。
しばらく私は寝付けなかった。
ヤツは一体何者だったのだろうか。
能力は?
正体は?
最期に何故胸を触りながら死んだ?
最期に何故爆笑しながら死んだ?
私は初めてドン引きをした。
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ