クラインの壺
「博士!何やってるんですか!やめてください!」
立野くんは、研究室がグニャリと曲がりくねるのを見た。
「いやあ、三次元を四次元に置き換えてみようと思っただけなんだが…」
博士も多重化している。
「あっ!」
研究室の棚に飾ってあったガラス製のクラインの壺が、普通の壺になっていた。
「これをどう思うかね?立野くん」
「次元が増えたんでしょうねぇ」
「では実験は成功じゃな!」
「…で?どうやって元に戻すんですか?」
「わからん」
「でええ?!」
立野くんはおたおたした。
「四次元は、縦✕横✕奥行き✕時間じゃ」
「はい」
「つまり、時間の観念が三次元と異なっておる」
「はい」
「ここにいる限り不老不死じゃ!」
「そんなバカな?!」
「冗談じゃ」
ガッチョン!
奇妙な装置の赤いレバーをひくと、研究室が三次元に戻った。
「博士〜、クラインの壺が粉々に割れてます!」
「ふうむ。ちと負担が重かったかのう?」
「僕らは大丈夫なんですか?」
「知らん」
「でええ!?」
今日も平穏な日だった。