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狂犬

「マジで来ると思ってんのか?」

 DJに尋ねられ、ウィリスは肩をすくめて返す。

「そりゃ来るさ。奴にとっちゃ俺は仲間の仇だし、その上『商売敵』でもある。探偵局だっつって正義ヅラしてるあいつなら、そう遠くないうち、俺たちの前に現れるさ。それも、たった一人でな」

「そこが理解できねぇな。あのオッサンなら、絶対有利な状況に持ち込んで畳み掛けると思うんだがな。俺の時だって、州軍に囲まれてふん縛られたところに、ドヤ顔で登場しやがったし。『もう逃げられんぞ、観念したまえ』って言いたげにな」

「ああ。普段のあいつならそうだろう。悠然とチェックメイトを宣言するチェスのチャンピオンの如く、どうやったってもう逆転できない、自分でキング倒して降参するしかないぜってとこまで持って行ってから、ようやく自分が前に出る。そう言うタイプだ。

 だが俺の場合だけは違う。俺に対してだけは、人任せにできねえんだ。他の誰が来ても、俺に殺されると思い込んでるからさ。犠牲が出るだけ無駄と踏んでるから、自分が行くっきゃねえってわけだ」

「なるほどな。理由は分かった。だがな」

 DJはなおも納得が行かなさそうな顔で、あごひげを撫でている。

「現実的に、俺たちがここにいることを突き止められるわけが無いだろって話だよ。資材や武器はまともなルートで運んでねえし、ここだって悪評が立ったことの無い、なんてことの無い小さな町だぜ? どうして俺たちがいるなんてことが……」「知るかよ」

 ウィリスは左手を挙げ、反論するDJをさえぎる。

「んなこたあ問題じゃねえんだよ。奴なら見付ける。それは真違い無い。そもそも仮に見付けられなかったってんなら、何も問題なんかねえだろ?」

「そりゃ、まあ」

「だろ? 問題にすべきは、お前が来るはずねえって思ってる『フォックス』がマジで来た場合だ。来ない来ないと思ってた奴が、マジに目の前に来たとしたら、お前とっさに対応できるかよ?」

「いや、そりゃまあ、何とか」

「きっとお前を確実に殺すべく、周到に用意してるであろう『フォックス』をか? きっちりブッ殺したと思って高をくくってたくせして、あっさり捕まっちまったお前が、んなことやれんのか?」

「そ……それは……油断が、ほら」

「今のお前が抜かした『そりゃまあ、何とか』が油断じゃ無くて、一体何なんだよ? 具体策の一つも無しで、コルト向けりゃイチコロ程度にしか考えてないのにか?」

「うっ」

 薄々考えていたことを見抜かれたらしく、DJが言葉に詰まる。相手が黙ったところで、ウィリスが提案してきた。

「だから仕掛けんだよ。あいつがここに現れる前に、こっちから見つけ出して攻め立ててやるんだ」

「な、なにぃ?」

「いいか、相手の手が分かんねえってんじゃ、こっちも打つ手がねえ。だがこっちが先に手ぇ出しちまえば、相手はそれに応じるしかねえんだ。その第1手目が致命傷なら、そのままおしまいだ。こっちの完全勝利ってことになる」

「んなもん、上手く行くのかよ? 相手は『フォックス』だろ?」

「『フォックス』だからだよ。あの野郎のやり口は承知してんだよ。ヤツは紳士ぶってやがるからな、ちょっと7、8人くらい巻き添えにしちまえば……」「お、おい、おい!?」

 物騒なことを言いかけたウィリスを、DJが慌てて止める。

「何をバカなこと言ってんだよ!」

「あ? 構いやしねえだろうが? 誰だか知らんヤツが死のうが何しようがよ」

「い、いや、それはまあそうだけどもよ、わざわざ他人を巻き込むのは……」「ああん?」

 突然、ウィリスはDJの胸ぐらをつかむ。

「てめえ、何を善人ぶってやがんだ? 散々血なまぐせえことやっといて、今更一桁にもならねえ人数ブッ殺すのが怖いってのかよ?」

「そ、そうじゃねえよ。俺が言いたいのは、それで万一しくじっちまったら、ただ罪を背負い込むだけで終わりじゃねえか、割に合わねえよってこったよ」

「割だあ? んなもん、『フォックス』一人消すのを考えりゃ、トントンだろうがよ。『必要経費』ってヤツだ」

「う……わ……分かった。や、やるって。やりゃあいいんだろ。分かったから待てって。なんか考えるからよ。ここは俺に任せといてくれよ」

「ちゃんとやれよ。しくじったら承知しねえぞ」

「あ、ああ」

 しどろもどろに答えつつ――DJは内心、ウィリスに辟易としていた。

(この殺人狂! やべえくらいトチ狂ってやがる……。参ったぜ、マジで)

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