【僕もあいつ嫌いだよ】
僕の足にしがみついたままの彼女を見下ろしながら、叔父の研究所までどう移動しようかと考えていた。
ストゥートには叔父の研究所は1つしかなかった。
レンバースという大きな街の地下にある。これは街のほとんどの市民が知らないのだという。
ロットにもこの国の研究所が1つあるがそちらはかなり古い研究所で叔父の……というよりは何百年も前からある極秘の施設らしい。
今は閉鎖されているが場所どころか存在すら公表されておらず、誰が作ったのかも定かではないくらい古い。叔父が管理を引き継いではいると言っていたが、今はほぼ放置状態だと聞いている。
「あ、お、お……」
レミナは僕に何かを言っているようだ。
「なーに?」
「あ、お、お……」
さっきから同じ単語を繰り返しているな……と僕が思っていた時、後ろの方からガチャっとドアが開く音がした。
コツコツとヒールの音を立て奥まで入ってくる。
「へー起きたんですか、レミナ。私たちがあれだけ呼んでもずっと反応なかったのに」
この声は……
「マラカナか」
マラカナ・リヴァル
軍人で叔父の秘書だ。
幼い顔立ちに若く学生のような容姿だが、他人の気持ちを図らず効率しか考えない非常に厄介な人物である。
はっきり言って僕は嫌いだ。
「ユナ君に随分懐いてますね。ペットみたい。そうそう叔父から伝言持ってきたんですよ。はい手紙」
僕は受け取り、すぐにメモを開いた。
『レミナもし起こせたら、ちょっと言葉とか教えてあげて下さい。コミュニケーション取れないので困っていたのですが、リンの扱いで慣れてる君なら彼女の心を開けるかも? 少し街とか外の世界見せてあげても良いです。研究所に連れてったら検査と薬漬けの毎日になっちゃうので今のうちに〜』
叔父の手紙にはそう書かれていた。
「1週間くらい遊んできて良いみたいですよ。あなたは優秀ですし信頼されてますねぇ」
マラカナは意地悪く口の端を上げてそう言った。
「なんか色々と僕に押しつけてるだけでは?」
「まーそうですね。将軍忙しいんですよ。国から責任取れ取れ言われてるし、レミナとリンは兵器としてイマイチ使えないみたいですしねぇ。リンも学院で問題なく成長してるし監視の目を解いても大丈夫だと判断したみたいです。レミナは反抗的で人間らしいコミュニケーション取れないし、第2……とと、失礼。第4兵器がね、1番使えたな〜……これからって時に1回の失敗で国は施設閉鎖しろって言うから、まるで全部失敗だったみたいに取られてしまって心外ですよ!」
「いや1回の失敗で国1つ無くなってるんですけど?」
この女はネジが一本飛んでるようにしか見えないな……と僕は思った。
「まーあれはやりすぎだったよねぇ。私学生だったんで戦争行ってないし、よく知らないんですけどね!」
この人間の話を聞いていると心底気分が悪い。
「でもね、ここだけの話、次……作ってるんですよ! そのためのデータ集めにレミナ必要なんですって。だからユナ君レミナしっかり届けてね! ついでに色々と人間ぽくしといてください。うまく行けば、初号兵器みたいに人権と戸籍もらえて学院に入れるかも? そしたらレミナもリンみたいに利用価値上がるし」
そう言って、マラカナはやっと出て行った。
「はぁ……」
僕はため息をついた。
今日はもうこれで何回目のため息だろうか。
「あ、お、お……」
あの軍人が来ていた間ずっと黙っていたレミナだったがまた何か言っている。
「君もあの女嫌い? 僕もだよ」
僕はそう言って、レミナの前でしゃがんだ。彼女と目線を合わせる。
「ゆ、あ……あ、お、お」
「ユナ、あそぼ?」
「あうー!」
僕の言葉にレミナは興奮して笑った。
「なんだ……ちゃんとコミュニケーション取れてるじゃないの。レミナは賢いよ。そうだね遊ぼうね」
僕はレミナの手を取り外へ行こうと言って一緒に部屋を出た。




