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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
番外編 ユナとレミナの物語
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【ユナとレミナの出会い】

 これはリンの物語が始まる2年前まで遡る。


 僕は寮でリンと別れた後、部屋で出かける準備を終え、学院の管理ビルの地下にある極秘の金庫室まで来ていた。


 そして僕はここで初めてレミナという国が過去に開発した第3兵器と出会った。


 彼女との関わりにより、僕のレールに沿って進められていた人生は、これから急激な変化を遂げることとなる。


 リンの物語からはかなり脱線させてしまうのだが、少しだけ僕のお話にお付き合い願いたい。


「レミナ、起きて。僕たちはこれからちょっと行くところがあるよ」


 僕はこのレミナという名の付いた人の形をした兵器に話しかけた。

 これから学院の管理官である叔父の頼みで、この女の子を僕はある所へ連れて行かなければならない。


 彼女は今、大きいカプセルのようなケースの中でチューブに繋がれ眠っていた。



 僕の名はユナ・ユンバース。



 そして母の名前はリサ・グレイダー、父はディック・ユンバースという。


 なぜ両親の名前が違うのかというと、僕の父は妹が生まれて間もなく病気で亡くなった。

 父の死後、母は僕の叔父の妹として戸籍を変えたからである。


 つまり叔父は戸籍上叔父だが、実際は血の繋がった叔父ではない。まぁ正確にいうと全くの赤の他人…に当たる。



 僕の母はとても弱い人だった。

 父が亡くなり、1人では金銭的に子ども2人は育てられないとディックの友達だった叔父にすがったのだという。


 僕はその頃4歳だったので、父の顔はもちろん覚えていて、優しくとても大好きだった。その時初めて人の死が悲しかったのを覚えている。




 叔父は僕の母を資金援助する代わりにある条件を出してきた。



 1つは叔父の研究の後継者として育てるために僕を叔父の元へ引き取らせること。


 そして叔父のクローンで生物兵器の実験体であるリンを母が引き取り自分の子供として育てること…だった。


 母はそれを受け入れた。僕の妹をリンの妹として育てたのだ。

 そして僕は叔父に引き取られ、叔父の家に住み、厳しい英才教育を受けた。


 そう、僕は母に捨てられたも同然だった。


 別に恨んでいるわけではない。

 ただ実母と実の妹であるリリフに家族の愛情など何も感じることなく僕は育った。


 そして叔父は軍の上層部の人間でいつも忙しく、僕と1つ屋根の下に暮らしていても顔を合わせることなど年に数回程度であった。


 もはやただの同居人だ。


 教育係の使用人は沢山いたが、私語もろくにできず毎日毎日勉強の限りをつくした。


 そんな生活を強いる叔父に愛情など湧くはずもなく、まだ幼い僕は叔父の敷いたレールの上を無我夢中で走っていた。


 僕が8歳の時にロットとの戦争が終わり、その1年後にこの学院はできた。そして僕はすぐに入学させられた。


 その頃は学院でも友達も作れず、研究者を目指して勉強の日々に明け暮れていた。


 そんな日々を過ごして2年が経った頃、リンが入学してきた。

 そして僕は叔父の言いつけにより、めでたくリンの監視役に抜擢されたのだ。


 僕の家族を盗った兵器の監視役なんて……と、もちろん最初はかなり嫌々であった。


 だが皮肉なことに、この学院でのリンたちや仲間との何気ない生活を送った5年間が、僕の今までの人生の中で1番楽しくて幸せな時間だった。


 それはもちろん今でも変わりなく、このレミナという兵器を送り届ければその生活に戻る……と僕は信じている。




「レミナ。そろそろ起きて」




「………」




「聞こえてる? 君は8年前の戦争からずっと眠ったままなんだってね。第4兵器に影響受けちゃったのかな?」



「…………」




 話しかけるがレミナは目をつぶったままで反応はなかった。


「だめか。まぁ眠っているのか停止してるのか。カプセルに入ってると息づかいすら聞こえないし。なんかリンと全然違うな……」



 レミナは友達のリンと同じ顔をしている。


 あぁ、とても気分が悪い。




「リンは家族みたいに大事。なんで兵器なんかにされなきゃ……いけなかったんだ」



 僕は叔父に歯向かえない自分や大事な仲間を守れない自分にいつも苛立ちを感じている。


 最初の頃はいつも懐いて寄ってくるリンが鬱陶しかった。


 それでも邪険にすることはできず、適当に相手していた僕だが。


 まぁ何年も一緒にいれば情もわく。


 リンは兵器だって忘れちゃうくらい喜ぶし、泣くし、怒るし、笑うし、人間らしい率直な子ども時代を過ごしていて、僕はまるで親や本当の兄のようにだいぶ苦労させられた。


 そこには確かに家族と同等の愛情があったのだと思う。


 気づいたらリンは自分を捨てた実の母やほぼ会ったこともない妹よりも大切な家族になっていた。



 リリフ、僕の実妹が3年前に学院に入ってきた時、嬉しいと幸せそうに語るリンを見るたび心が痛んだ。


 あの2人はリンの本当の家族じゃないんだよ……と謝りたかった。



「レミナ、起きて遊ぼう」



 とか言ってみる。

 モノは試しだな。


(まぁ起きないならしょうがない。カプセルごとバイクに台車をつけて運ぶか……)




 ブゥン……ピッ、ピッ……




「ん?」




 カチャっとカギが開くような音がした。


 カプセルが、開く。





「お、は……あ、お、お」




 レミナはカプセルの中で目を開けた。そして何かを言ってるみたいだが、全く理解できない。



 訓練されていないのか。




「レミナ」


 名前を呼んだ。


「僕はユナ、分かる?」




「う……あ?」




 まるで言葉になってない。



 せっかく起きてもらったが、これではコミュニケーションも取れないじゃないか。



「あ、お、お……」



 そう言ってレミナは起き上がり、カプセルからふらふらと這い出て、子供のように僕の足にしがみついてきた。


 叔父からは12歳と聞いていたが、想像していたよりも随分華奢で小さい存在だった。

 外見は7~8歳の子どもに見える。


 腰まである青く長い髪が体に纏わり付いて、とても鬱陶しそうだ。

 ずっと眠っていたためか足元も覚束無い。


 リンが伸ばしっぱなしにしたらこんな感じだろうか。

 彼は学院で伸び伸びと過ごしているのに、この少女はカプセルに押し込まれ、身だしなみも放ったらかしにされている。その上言葉も教えられていないようだ。


 この差はなんなんだろう……





「あおお……あおお?」



 やっぱり言葉になってない。





「マジ? 僕はそこから教えるの……」



 また子守りが増えたな……と深いため息をついた。


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