【説得力ないから】
ここはグリル村からさらに上、ティラタまで行かない隠された所にある洞窟の中の道具屋だった。
カトレアはとーまの道具屋で異様な格好の彼のために、ソファで猫さん着ぐるみを作成中だ。
その間グレースはユナとレミナのことを吹聴していた客のこと尋ねた。
「初めてアノ2人がウチに来た日だろ? レミナがオレのサングラス壊して帰る時、丁度1人来たヨ来たヨ! ウチの常連サン」
「本当⁈ できればその人のことを詳しく教えてもらいたいんだけど……」
「エー? でもソイツ男ダヨ? 情報いらなくネ? いらなくネ?」
とーまは体を揺らして、男ダヨ? を連呼した。
「いや男とか女とかそこは重要じゃないから。名前とか、どこの人とか分かるかな?」
グレースは再度改めて聞いた。
とーまはう〜んと思い出そうとしている。
「名前は……確かポアロ?」
「ポアロ?」
グレースは聞き返す。
「ポカロ? ポールポーロ?」
「ポから始まるその辺の響きの名前ってことかな?」
「おぅ。男キョーミねーからナ。すぐ忘レることにしてんダヨ。ヒャハ」
そう言って、とーまはケタケタと笑った。
「興味なくても、常連さんの名前ぐらい教えてもらったら覚えておいてくれ……」
「んダヨ。グレちゃんはソノ辺ウルサイのな」
「なんでそっちは覚えるのかな?」
「だって、カトレアが言ってタヨ。オメェはグレちゃん。変わった名前ダナ。グレちゅん……グレぴょん? グレっぴ?」
「あ、そうやって段々ズレていくのか。その人どの辺に住んでるか知ってる?」
とーまは首を縦に振って、ウンウンと頷いた。
被り物で顔が隠されている彼の大げさなパフォーマンスはある意味分かりやすくて良い。
「ソレは知ってるヨ! その人はいつもアンチ所だよ! アンチ所から来るって言ってルヨ」
「安置所? お葬式とかの仕事の人ってこと?」
「ナニ言ってんダヨ? アンリ所だよ! アンミ所? 橋にあんじゃんカヨォ」
橋と言われて、グレースは気づく。
「……管理所?」
「そう! ソレだよソレ‼︎ カンミ所!」
とーまは嬉しそうな声で肯定した。
(あそこは学院の管轄内。卒業生の職員も多い。そーか、そこからマラカナにリークされたか)
「その人、何買いにいつも来るんだ?」
「ん?あぁ、ポークはいつも……ソノ……」
急にしどろもどろし出すとーま。
「?」
グレースはどうした? と尋ねる。
「言っタラ怒られルヨ」
「ヤバイものでも仕入れているのか?」
とーまは見せてもいいけど……と、カウンターの下の棚を探り出す。
「アル意味、ヤバイかもナ。グレっぴ今いくつヨ?」
「えっ? 年齢の話? 18歳だよ。今年で19になるな」
「ならイイか。オレが言ったって言うナヨ? カトレアに見せるナヨ? ポロカはこの……フィギュアをこっそり買いにいつも来てんダヨ」
とーまはそう言って透明の箱に入ったモノを出した。
「……あ‼︎‼︎」
グレースは目が点になる。
とーまの手には明らかにヤバイ姿の人形が……
「もしカメラ回ってるならモザイクかけトケヨ? 18禁ダ。まぁオレはまだ18歳になってないけどナ。ピカ受けた時はまだちっこいガキダったヨナ。たぶん」
グレースは本当にここは色んなものがあるな……と呆れた。
(カメラ回ってるってどういうことだ? っか、コイツ俺より若いのか……いや、年上とも思ってないけど)
「そうか。うん分かった。よく分かった。今回は教授の取り越し苦労だったようだ。ありがとう、とーま。またちょっと外に出るわ。カトレアに何かしたらダメだからな? また銃で撃たれるよ?」
グレースは強めに首を指す。
「分かってルヨ。カトレアに嫌われるコトしたくないヨ。ソコは信用してオケだァ!」
とーまそう言って着ぐるみのモコモコした手で親指を立てた。
きっと頭巾の中はドヤ顔をしているのだろう。見えなくても分かるのが不思議だ。
「その人形持ちながら言われても、全然説得力がないからな?」
グレースはそれだけ告げて、店の外へ出て行った。




