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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第11章 ユナの元へ
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【タケルという男】

 名もなき漁村。

 とても小さな集落だ。

 ざっと見る限り木造の民家が4つある。

 それ以外に少し大きめの建物が真ん中に1つあるだけだっだ。


 港からアルパカたくしーで海辺をずっと走り、30分と経たずにあっという間に着いた。


「お疲れ様でした。またのご利用を!」


 たくしー協会のオジさんはそう言って、アルパカと一緒に港へ戻っていく。



「海風が気持ち良かった。たくしー様々だね」


 リリフはそう言って、背伸びをした。



「いやー早かったね」


「楽だった! ユナといつも何時間も歩くから、いっぱい金があると楽だな!」


 アプとレミナもそう嬉しそうに、漁村の方まで入って行く。俺とリリフも続いた。



「次はどんな船? みんな乗れるのかな?」


 俺はレミナに尋ねた。


「小さいぞ。ごく小さい。でも、けっこう乗れる気がする! もし乗れなかったら、泳いでいくか?」


「……誰が?」


「それはもちろん……」


「何キロも泳ぎたくないよ」


 そもそも俺はどこまで泳げたっけか。

 学院に入る前はよく家族と海に行ってた記憶はある。入学後は子ども寮にいた時のプールの授業で少し泳いだくらいか。



「レディーファーストという、ことわざもあるだろう?」


 レミナがまたよく解らないことを語り出した。


「レディーファーストは知ってるけど、ことわざって何? 聞いたことないけど絶対違うでしょ? どっから仕入れた知識?」


 レミナは失礼な! と力んだ。


「私には言葉を教えてくれた師匠がいるのだぞ。ことわざも師匠から教えてもらった。えーっと猿と木から落とす……」


「なんか、怖いんですけど……」


 一体猿と何を落とすんだか……




「お! レミナではないか。どうしたのだ? 随分友達を連れてきたのだな⁈」


「ん?」


 俺たちが漁村の入口のあたりで喋っていた時、聞いたことある話し方の声がこちらに掛かった。


「おぉ師匠! また船に乗っけてくれ!」


 師匠?

 レミナはそう言って、師匠と呼んでいる相手に大きく手を振った。


 さっき船でレミナが言っていた、ストゥートから逃げてきた人の息子だろうか?


 黒い髪をかなり短めにカットしていて、顔はシュッと引き締まっている。体もかなり鍛えられていて、日に焼けた肌とマッチしていた。


 パッと見は俺たちより少し年上くらい……若い長身の海の男! といった感じのカッコいい男性である。


「それは構わないぞ! 島でいいのか?」


「ああ。頼む!」


「丁度良かった。今から島に行く予定だったのだ」


 会話を聞いていると、声は違えど話し方がそっくりだ。



「レミナが2人いるみたいね、アプ」


「頭が混乱するわ……」


 リリフとアプは笑っている。



「おー君たちははじめましてだな! スワルスト・クロズワ・ケルト・タケルという者だ。よろしくな!」


「スワ、ズワ? ケル……ケル」


 うまく言えなかった。

 俺は舌がつる。


「スワルストさんでいいんじゃ?」


 と、アプ。


「あはは。とりあえずタケルでいいぞ。上の2つは私が昨日考えて付けたのだからな! ははは」


「おー良かった。私の記憶ではタケル・クロズワと認識してたから、自分がてっきり記憶喪失かと思ってしまった」


 タケルはケラケラと笑っている。

 レミナの言葉からこの人はタケル・クロズワさんのようだ。



(クロズワ……変わった名前だな)


「長い名前に憧れて付けてみたんだが、イマイチ村では評判が悪いのだ。仕方ないから、島に行って自慢してこようかなと思っている。さぁみんな行こう! 船はこっちだ!」


「そんな理由で島に……」


 リリフは苦笑いしていた。


 タケルの誘導で狭い村の船場への移動はすぐ済んだ。入口からほんの50メートル先に漁で使うであろう漁船が5隻ほど並んでいる。


 港の船よりは小さいが、しっかりとした船で10人くらいは乗れそうな感じだ。


「あの端っこのが私の船だ。さぁみんな遠慮なく乗ってくれ! 島まで出発しよう! レディーファーストだ!」


「おぉ、ことわざだな」


 と、レミナ。


「ん? なんの話だ? 諺は猿も木から落ちるとかだろう? 慣れてても失敗することがあるから気をつけろって言う戒めだ。まぁいい! 乗ってくれ!」


 と、タケルは訂正する。

 なるほどそれなら……と、俺は納得した。

 少し諺というものに興味が湧く。


「おー戒めか! 落ちるのだな! リン! 私は間違えてたようだぞ」


 レミナはことわざ難しいな! と言った。


 やっぱり……と俺は思ったが黙っていた。

 俺たちはタケルの誘いに従って船に乗り島を目指した。


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