【レンバースの街】
「この辺はやっぱり春でも寒いのね」
ストゥートの陸地のかなり北……北限の町ウェイルズまで行かない少し手前にあるレンバースという街は国で1番大きな街だった。
「ワイズ?」
街の入り口で立ち止まっていたワイズにカヲルは声をかけた。
「カヲル、ここの街では研究所の存在をほとんどの人が知らないって聞いたことがあるの。それって本当だと思う?」
「それは、俺も聞いたことがある。誰から聞いたんだっけ……」
カヲルは古い記憶を呼び戻す。
昔、誰かに……
「あ……そうだ」
「うん?」
「リンからだ。リンが……ユナから聞いてよく言っていたんだ。地下にある超巨大研究施設。今はほとんどが閉鎖されてるけど、一部はまだ動いていて街の人はその存在すらも知らずに暮らしている。もう何年も前になるけど、秘密の話として共有してた。ワイズもリンから聞いたのか?」
カヲルの言葉にワイズは自分が聞いたのはそんな話じゃなかったと言って首を振った。
「私はたぶん噂だった気がする。その頃はまだリンたちとは会ってないし、その噂の中で変な詩の唄があるの」
「唄?」
ワイズは女子たちの間で流行っていた唄だと言った。
「きたのひみつは
だれもしらない
そんざいしない
なかったことにしたければ
めをつむれ
なかったことにしないなら
だまってたどれ
ほしのいえ
たどればみえる
ほしのとけい
たどればわかる
ばもーるのほし」
「それは……」
ワイズの歌う唄は少し悲しい感じの子供の童話のようだった。
「これバモール研究所のことよね?」
「確かに、暗号みたいだ。でも、誰が作ったんだ?」
「分からないわ。覚えてないの。誰から聞いたんだろう? 子ども寮で……うーん誰だったかな」
ワイズはこんな時にカトレアがいれば……もしかしたら彼女は覚えていたかもしれないと話す。
「黙って辿れ、星の家。辿れば見える、星の時計……か。とりあえず星の家を探して進んでいけば星の時計があるってことなのかな?」
カヲルはさっきの詩の道順のような部分だけ切り取ってそう言った。
「おそらく。カトレアにスキャナーで聞いてみる?」
「いや、いいよ。2人にも教授からの任務がある。邪魔しちゃ悪い」
「そうね。とりあえず、街に入ってみましょう」
2人は街の入り口に立っている兵士にストゥーベル学院の《探索》チームの生徒だと告げた。レンバースの兵士はご苦労様です! と言って敬礼し、門番に開けるように指示する。
少しして、巨大な門はゴォォと大きな音を立てて開いた。
ワイズはお礼を言って、カヲルと中へ入る。
街の中に入るととても綺麗に整備された広い道にみんな同じような色をしたレンガ調の家が平行に連なって並んでいた。
広い道や街の割には人は少ない。
たまに歩いている人もいるが、ワイズたちと目が合っても、関わるまいと早々に立ち去ってしまう。
自分たちは街の人から見れば完全に余所者なのだろう。
「これは……誰かに聞いてとかはできそうな雰囲気じゃないな」
「想像してたよりも難航しそうね……」
2人はとりあえず、唄の『星の家』を探すべく、街の中へ進んでいった。




