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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第10章 意外な人物
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【あの姉弟か】

 グレースとカトレアが出て行った後に、コロアは部屋を出た。


 そのままゆっくりと廊下を歩く。


 先ほどドアの外に人の気配を感じた。

 それを分かっていて…わざとゆっくり進んだ。


「教授……」


 少し行った所で、後ろから声がかかる。声に心当たりがあるコロアはやっぱりなと確信して振り向いた。


「こんにちは。ところでさっきのアレは何なんですか? チョコとか言ってましたけど……」


 そこには20代半ばであるにも関わらず、学生のような幼い見た目の軍服を来た女が1人……いた。

 よく知っているあの軍人だった。



「マラカナか。さっき盗み聞きしてたのはお前か」


「すいませんね。教授の可愛い生徒たちが戻ってきてたみたいだったんで。私のお気に入り君はいませんでしたが」


 マラカナは飄々と言った。

 その姿は相変わらずふてぶてしい。


「お前は何を企んでいる?」


「何も企んでませんよ。私は。この国を……子供たちを守りたいだけです」


 コロアはマラカナの言葉に嫌気が刺す。


「ウソをつけ。このペテン師が」


「確かに私はペテン師かもしれませんね。おかげで身内にも疑われています」


 そう言って彼女は静かに笑った。



「すべて身から出た鯖だろ?」


「かもしれません。ただ、これだけは言っておきます。私は何があろうとも将軍を裏切ったりしません。彼の味方は私だけです。そして、彼の息子であるリンやその大事な仲間ももちろん守りたい。それは絶対だと思ってくださって結構ですよ」


 マラカナはそこは誓いますと軍人らしく敬礼した。


「はっ、どうだかな」


「ホントですよ。それは変わりません。昔から」



 マラカナは穏やかに笑っている。

 ペテン女にもブレない部分はあるのかとコロアは感じた。



 コツ……


 コツコツ……





「……姉上」



 コロアは足音がしたと同時に後ろから現れた人物にぎょっとした。


 足音がする直前までこの人物は気配がなかった。いや、気づかなかったと言った方が正しいかもしれない。

 この声の主に只ならぬ悪寒を感じゾッとする。


(こいつ……やべーな)


 コロアの五感が危険信号を出しているが、とにかく勘付かれぬよう冷静を装い黙っていた。


「急に会議を抜け出されたみたいですが、どうされましたか? そろそろ私たちは、軍部に戻るようですよ」


 そう言ったこの男は確かリンが管理ビルに呼び出された時にマラカナと一緒に部屋にいた奴だと今更気づく。


「ギアス。なんでもないですよ。この先生にちょっと学院の様子を報告をしてもらっていただけです」


 マラカナは素っ気なく答えた。

 自分の弟に話しかけているとは思えない…冷たい感じがした。


 ギアス・リヴァル。

 彼はマラカナ・リヴァルの弟でやはり軍人だ。銀色に近い金髪のマラカナとは真逆の見た目で…漆黒の髪に黒い目で幼さなど全く感じないキリッと整った顔立ちだった。

 言葉の丁寧さと同じくらい感情が感じられない…無表情な顔だ。


 スキャナーから聞いていた話だと、アパレルと同級生だと思われる。ということは…18歳か…若いなとコロアは思った。



「軍は引き上げるのか?」


 コロアはギアスに尋ねる。


「いえ、私たちは帰りますが一応警備のために兵士は少し残します。何かあっても困りますし……ここだけは。姉上、あまり勝手になさらぬ様お願いします。母から私が怒られてしまいますので」


「分かっています。母の言いつけは絶対です。従うしかないのですから」


 ギアスはお願いしますと言って、再び去って行った。



「おまえ……」


「私は国に……たとえ母や弟に殺されても将軍を裏切ったりしません。リンとアプがレミナに会えて良かった。では、チョコの件よろしくお願いしますね」


 マラカナもそう言い放ち、エレベーターの方へと歩いて行った。



(あの男の常に出している殺気は何だ? たとえ姉のマラカナでも本当に平気で殺しそうじゃないか。リン……あいつは管理ビルであの男に会った時に何も感じなかったのか?)


 廊下に残されたコロアは1人で長考していた。危険な感じが学院を取り巻いている気がしてならない。


(鈍いのか……それともリンがあの男以上に強いか……だな)


 コロアは後者を願って部屋へと戻った。

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