【グレースの気持ち】
「みんな大丈夫かな」
グレースとカトレアはバイクで港を出発し、学院の門まで来ていた。これから呼び出されているコロア教授の元へ向かうところだ。
「かなり心配ではあるけど、たぶん大丈夫だろう。そこは信じるしかないな」
グレースは言った。
「先生は何の用事なんだろう」
「これから行けば分かる」
「あんまり怖い頼みごとだったらやだなぁ」
今日のカトレアはよくしゃべるなとグレースは思った。
「カトレア、2人で任務とか、負担かけてすまんね」
「あ、全然。私は慣れてるし」
「カトレア強いもんな。というか、銃の腕が上手い」
「えっ、そうかな。意識したことないや」
カトレアは褒められて、顔が赤くなった。
そんなこと人に言ってもらえたのは初めてだ。
「いやーうまく援護してるよ。ちゃんと前線のリンやカヲルに当たらないようにモンスターや獣を捉えてる」
「リンリンの動きはたまに早すぎて、ちょっと当たりそうで怖いときあるけどね。でもカヲたんの誘導が上手いから援護しやすいよ! モンスターまで誘惑しちゃうなんて、さすがプレイボーイ!」
カトレアは陽気になって答えた。
人に認めてもらえるというのは、どうしてこんな嬉しいのだろうか。
「本人はそんな気全然ないみたいだけどね。あー見えて一途だし。チャラチャラしてるように見えるけど。あれ? そういやカヲルンじゃなかっけ?」
「カヲたんに嫌って言われちゃった。だからカヲたんにした!」
カトレアの返事にグレースは「ははは」と笑った。
「なるほど。その辺の違いは俺には分からんけど」
グレースは楽しそうに話している。
門から教授たちのいるビルまで5分ほど歩けば着くだろう。もう半分くらいまで来ていた。
「ねぇグレちゃん」
横で一緒に歩いているカトレアは少し間があった後に、グレースの名前を改めて呼んだ。カトレアはちょっと遠慮がちに何か聞きたそうな雰囲気である。
「なに? 心配事?」
任務のことが不安なのかなとグレースは聞き返した。
「グレちゃんて……ワイワイのこと好き?」
「は⁈」
いきなり思ってもいない質問にグレースは驚く。
「あ、前にリンリンが……その……それで私は2人のお邪魔をしてるんじゃないかと……」
カトレアは思い切って伝えた。
「ワイズのことは頼りにしてる。しっかりしてるし、良いみんなの監督役だ。というかお母さんみたいだな」
グレースは淡々と答えている。
「異性としては?」
「んー? 正直、そういう意識はないけど? 今は自分のことや仲間のこと、弟のことでいっぱいいっぱいだな。好きとか嫌いとか考えてる暇も……でもどうしてワイズなの?」
「グレちゃんて、ホントそういうとこ鈍いんだなぁ……」
「へ?」
グレースは、よく分からないという顔をしている。
「今は気になる人いないの?」
「いるよ」
「ホント⁈」
グレースの返事に逆に驚いた。
(いるの⁈ ワイワイ以外に……誰⁈)
「ああ。すげー気になるやつ。もう目が離せなくて、どうしょうもなく世話焼きたくなる」
「え! 誰? 誰⁈」
カトレアは興味本位に尋ねる。
「リン」
「へ?」
カトレアの大きい綺麗な目が点になる。
彼から出て来た名前は想像もしてなかった人物だった。
「えっ! リンリン⁈」
「そう。ホントあいつは危なっかしくて、人が良すぎて見てるとハラハラする。今もなにも考えず敵陣に突っ込んで行って、みんなを大変なことに巻き込んでいるんじゃないかと気が気じゃない。全く……あいつはどこまで人に心配させれば気がすむんだか! もうちょっと成長してくれないとこっちは夜も眠れないっていうのに! 今回のこともそうだ。何も考えず勝手に学院を抜け出して、後は野となれ山となれって感じで行動したんだろう。あいつの思考なんて手に取るように分かるわ! 教授や学院に怒られるのはこっちはだってのに……とかアイツに文句言っても分かる頭なんか持ってないし! 結局こっちは上から言われたこと全部飲み込んで、我慢してフォローするしかないともう諦めている! 言ってもしょうがないからね! どう思うカトレア? 俺はもうどうすればいいんだ⁈」
カトレアはグレースの勢いに圧倒されていた。
少し経って「はっ」と点目が戻った。
「あ、えっと……とりあえずリンリンが成長してくれないとグレちゃんがそっちの方に気が回せないのはよく分かりました……」
「分かってくれた⁈ 俺の苦悩というか心労を⁈ ごめんな! 普段はこんなグチとか言わないんだけど、何かもうこの際だから全部言ってしまおうかな! 聞いてくれる⁈ こないだもさぁ……」
グレースの嘆きは教授の部屋にたどり着くまで続いた。




