【アプさん誤解です】
船のシャワー室から出た俺は、客室まで目指して廊下を歩いていた。
あんな騒ぎのあった後だ。
他の客は部屋に引っ込んでしまっているのか、誰も歩いていない。
(ま、仕方ないよね。あんなん襲われたら怖いし、真っ先に狙われるのを防いで外には出たくないよな)
俺は着替えたばかりの自分の服を見た。
せっかく母からもらった服を1枚ダメにしてしまっていた。もっと戦い方を考えないとな……と猛反省した。
(帝国はあんな凶暴なモンスターが多いなら、レミナみたいに武器が必要かも。普段はしまっておいて瞬時に出せるやつ……レミナはムチだったけど港に着いたら探してみようかな)
「あ……」
少し離れた先の廊下で声がした。
聞き慣れた声だ。
こちらへ向かってくる。
「あ、アプ」
「リン君! 大丈夫だった?」
そう言ってアパレルは近くまで来た。
「う、うん。不思議な話だけど、体は全然なんともないよ」
あれだけの傷を受けてなんともないとか…今更ながら自分の体がとても怖い。本当に遺伝子改造されているんだな……と、今頃になって実感していた。
「本当になんともないの? そんなこと起きるなんて……」
「ははは。ヤバイよね。超回復って言うんだってさ。いっぱい切られても死なないのかね。もうモンスター越えた化け物だよね」
俺はそう言って、右手で自分の後ろ髪をクシャっと掴んだ。
「超回復……すごい能力だね。レミナは色々聞いたけど教えてくれないから」
「えっ、なんでだろう」
「わからない。信頼されてないのかもしれない」
アプはそう言って下を向く。
俺とそう背の変わらない彼女はとても賢く…そして綺麗だ。
「そういうわけでは……さっきシャワー室でこんな話は他の人に聞かせられないみたいなこと言ってたし」
俺は慌ててフォローする。
レミナは信用してないとかそういうことではないと。きっと事情がある。
「私は軍と繋がってると思われてるのかな? マラカナやギアス姉弟に監視されてるし……って、えっ? シャワー室で⁈」
「監視は俺もされて……って、あっ! 別に一緒に入ってたわけではないよ? 仕切り越しに。いくらなんでも、あんな子どもみたいな見た目でも女の子とは入らないよ!」
俺は慌てて訂正する。
これは失言だ。
1番誤解して欲しくない人に……と。
「うん。誰と入っても別にいいけどね」
「入ってないよ?」
「ん? 全然気にしてないから大丈夫だよ? 法律に違反しないか考えてただけ」
「しないでしょ‼︎」
なんとなく、アプの目が冷たい。
「あ、私もう行くね!」
「あ……」
彼女は行ってしまった。
俺は部屋に入っていくアプの後ろ姿を見届ける。
「全然気にしないか……」
俺は寂しい気持ちで自分の部屋に戻った。




