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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第9章 船に乗って島へ
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【それぞれの旅立ち】

 俺たちは3人はグレースたちのいる宿までやって来た。


 教えてもらった旅館は港の奥の宿街のさらに奥まで行った所にあった。『いぶきや旅館』と書かれた看板は大きく遠くからでもよく見える。一目ですぐに場所が分かったくらいだ。


 純和風といった感じの、なんとも趣のある年季の入った旅館である。


 約束の時間より幾分早く着き、3人外で待っていたのだが女将が声をかけてくれ応接間に案内された。


 応接間は和室で10畳ほどの広さで、真ん中には厚みのある立派な座卓と座椅子が置いてあった。仲居がお菓子とお茶を置いていく。


 静かで青々とした畳の匂いがほっと落ち着く部屋だ。俺たちはお礼を言って座った。



 しばらくして、グレースたちがやって来た。


「待たせたね」


「おはよう。今日は船動いてたよ。港に行こうか」


「あー、リンそれなんだけど……」


 グレースから、カヲルとワイズは今回船には乗らないことになったと告げられた。一緒に泊まったはずのアプとカトレアも今知ったのか驚いている。


「俺とワイズはバモールの親父に会いに行く。何か分かるかもしれないし、とりあえず2人で行く。もう決めたんだ」


 カヲルとワイズの意思は固そうだ。

 リリフはカヲルと目を合わせないで俺の後ろで顔を背けていた。


(この2人は少し距離を置いた方がいいのかもしれないな……)


「人類を救うために色々と情報は多い方がいいもんね。レンバースは学院からけっこう遠いし、2人とも気をつけてね」


 心配だから一緒に行きたいけど……と俺は言う。


「大丈夫。教授からも改めてお願いされたし、バイクで行けるんだ。《探索》の公式な任務になったから」


 カヲルは心配しないでいい知らせを待っててと笑った。彼は思っていたよりも穏やかだ。何かふっきれたのだろうか。



「今朝コロア教授から連絡があって、2名ほど一度学院に戻ってほしいと言われた。頼みごとがあるそうだ。アプとレミナは船に乗るとして、あと1人くらい誰か戻れる?」


 グレースは無理そうなら、俺1人でも良いんだけど……と言っている。


「私はユナ……彼に聞きたいことがあるから、できれば船に乗って行きたい」


 リリフは答えた。

 これは個人的なことだから、学院とは関係なしに1人でも行くつもりだと。やはり色々と事情が事情だけに、じっくりユナと話したいのだろうか。


「あ、じゃあ俺戻る?」


 俺はユナとは通信機で聞きたいことも聞けたし満足していた。アプの両親を探してほしいと言われているし、行って何か役に立つわけでもないわけで。


 母からもらった餞別はすでにリリフに渡してあるので問題ないだろう。


「リンリンは船に乗った方がいい。ユナぽんに会う必要がない私がグレちゃんと戻るよ。船で女ばかりも心配だしね!」


 この声はカトレアだ。


(ユ、ユナぽん……会ったことない人でもあだ名をつけるか。ぶれないな)


「ありがとうカトレア。たぶん、別任務をお願いされると思うから、2人で頑張ろう。よろしくな」


 カトレアは任せて!と頷いた。


「今ある通信機はワイズ、アプ、俺、そしてレミナの4つ。できれば全員で連絡先を登録しておこう。お互い随時連絡してほしい」


 そう言ってグレースはみんなの番号が書かれたメモを見せる。アプとワイズはスキャナーに登録した。


「あ、レミナ登録分からないのだ。困ったな」


 レミナの通信機は画面がないタイプだ。ユナに連絡できるボタンしか知らないと言う。


 グレースは番号のメモをレミナに渡した。


「悪いな! ありがとう!」


 彼女はカバンにしまう。

 これで一先ずは安心できる。


 俺たちは旅館の女将や仲居にお礼を言って宿を出た。


 カヲルとワイズはレンバースの街にあるバモールへ。グレースとカトレアは学院の教授の元に。そしてアプ、レミナ、リリフ、俺たち4人は港から船でユナのいる島へと目指し各々出発した。

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