【B室では】
「まさか、外に行ってたとはね……」
通信を切った後グレースにリンやリリフのことを説明されたカヲルは少し怒り気味の声で言った。
「まぁまぁそう怒るなよ。カヲル」
グレースはなだめる。
「俺たちに心配かけまいとって、逆に心配だっての! こっちはずっと個別室で待機だっていうのに……」
「B室!」
「あ、はい」
カヲルの言葉にカトレアからの指摘が入った。先程から個別室というのを彼女はなぜか許さない。カヲルはちょっと逆らわないでおこうとそれ以上何も言わなかったが、それで少し気がそれ怒りもなんか飛んだ。
「まさかレミナって子と合流してるなんて……どうするの? グレース。私たちはここの個……B室でずっと待っているつもり? リンがマラカナから聞いた話だと、モンスターが襲ってきたわけではなく、村人がモンスターにされちゃって建物とか作物を壊したってことよね?」
ワイズは聞いた。
モンスターの襲撃ではなかった以上、ここでの待機はみな時間の無駄だと感じ始めていた。
「あぁ。しかも、もう全員捕獲してるようだし、軍も警備してる。とりあえず、今学院に危険は少ないよな」
グレースは答えた。
そしてう~ん、どうしようかねと言って、眉間にシワを寄せて考える。
「とうとう始まったんだ……」
ぼそっと誰かの呟く声。
「アプ? 大丈夫?」
カトレアは隣に座ってそう呟いたアパレルに心配そうに声をかけた。
「やばいのよ……」
「アプ? 今何が起きてるの?何か知ってるの?」
ワイズも尋ねた。
「人をモンスターに変えて、何かを企んでる何者かがついに動いた。《研究》チームの私たちも軍から特効薬の開発を急かされている。でも開発は思うようにいかなくて、効果があるのはストゥート人の一部の変異した人だけ。もちろん副作用も強い。私の両親も行方不明だし、研究を引き継いだカヲル君のお父さんも元々は専門外だから、苦戦してるの。やっぱりユナって人がいないと……ダメなのよ」
アパレルはそう言って
「もうね、お手上げなの。私では力不足」
と落胆し机に伏せた。
みんなそんなアパレルを辛そうな目で見る。なんて声をかけていいのか分からない様子だ。
「じゃあさ! レミナって子の所に行って、ユナって人の所に連れてってもらおうよ。今ならまだ港にいるよね? 間に合うよ!」
「えっ……」
「……そ」
気まずい沈黙を最初に破ったのはカトレアだった。彼女の真っ直ぐで綺麗な目が強くアパレルを見つめる。
「カトレア……」
「私たちにできることがあったら何でも言って! あまり役に立たないかもしれないけど、力になれるように頑張るから1人で抱え込まないで!」
カトレアはアプの肩を正面から両手で掴み、そう言って顔を下に伏せた。
彼女は震えている。
「うんごめん。カトレアありがとう。こんなところで諦めちゃダメだよね。まだ始まったばかりなのに……まずは自分のできることをしなきゃ」
アプは決意する。
損得なく互いを想う仲間の存在というのは本当にありがたい。
とても力が湧いてくる。
「で、どうする? アプ」
「もちろん、行くよ! グレース君。特効薬をユナ君に協力してもらって完成させる! それには港に行かなきゃ……お願い! みんなも協力して!」
アパレルは強くそう求めた。
みんなは当然だ、と動き出す。
「リンたちの家は港の坂の上の家だ。たぶん、みんなそこにいる」
カヲルは言った。
「よし。《探索》チーム・Bグループ、人類の未来のため…特効薬作成のために動き出すぞ。まずはユナ・ユンバースのもとへ出発だ」
グレースはそう言って、コロア教授を通信で呼び出した。
そして教授が出たと同時に事情を伝え、うまく脱出できないかと無茶な要求をした。
『まじかぁ〜! ち〜、でもそんな事になってるならしょうがねぇ。なんとか出してやるから、みんなこども寮の前に集合な。ふふふ驚くなよ? そこにさ私が昔、こっそり酒買いに行くために作った秘密の通路があんだわ! そこから……』
「やっぱり……作ったのはあなただと思ってましたよ。リンたちそこから出たんです」
通信機の先でコロアは『まじかぁ〜! ははは』と笑っていた。




