【リリフと外へ】
「兄貴、私やっぱり寮に戻るのやめる」
マラカナが公園から出て行ったのを見送った後、リリフは俺にそう訴えた。
「さっきの話し聞いて気が変わった?」
俺の後ろで腕に捕まったまま動かない妹に俺は聞いた。
「うん。兄貴、実はお願いがあるの。私をある場所に連れて行って欲しい」
「ある場所?」
リリフは真顔で強くそう訴えた。
「母さんのところ」
「えっだって、母さん外だよ?」
リリフは俺にしがみついたままだ。
こう見るとまだ幼さが残っている妹は、とても小さく華奢で弱い存在に思える。
「母さんが言ってた。もし学院にいて、その時が来たら自分の所にリンと一緒に来て欲しいって。あの時はなんのことだか全然分からなかったけど、きっと今が『その時』なんじゃないかって」
リリフは俺と目線を合わせず、真っ直ぐ前を向いたままそう告げた。少し…体が震えているのが分かる。
「みんなには?」
「とりあえず、内緒でこのまま2人で行こう。みんなに……カヲル君に心配かけたくないから」
お願いとリリフは言った。
「わかった」
俺は覚悟を決めた。
「でもどうしよう? きっと学院から出してくれないし、勝手に出たら怒られるよね」
「大丈夫。俺に任せとけ! いいところがある」
俺はニヤリと得意げに言った。
「いいところ?」
「こっちだ」
そう言って、リリフの手を取り目的の場所へと移動する。
公園を越え、女子寮を越えた先、俺たちは12号館の通称子ども寮までやってきた。
そして寮の東の脇に草で覆われた場所、ちょうどここは寮や学院の建物から死角になっている。俺は地面を手でなぞり、四角く区切られた細い溝と鉄でできた取手を探す。
「あ、あった」
そう言って取手の部分を手に取り、上に強く引き上げた。
四角い溝は蓋の隙間で、持ち上げられた四角い蓋の下には、ポッカリと穴が空いていた。暗くて少し狭いが、中には古い階段があり大人でも降りていけそうな場所である。
「ここは?」
リリフは驚いた声で聞いた。
「昔、カヲルと見つけた秘密の通路。ここを抜けると、学院の外の裏側に出るんだ。よく2人でこっそり抜け出してた。まさかこんな時に役に立つとはね!」
俺は得意げにそうに言った。
そう、あの頃はカヲルと悪さばかりしてとても楽しかったなと不意に思い出す。
「カヲル君と2人でそんなことを……」
リリフは少し複雑に苦笑いをした。
危ないことをして……と思いつつも、今役に立っているので、複雑な心境なのだろう。
「ちょっと狭いし歩くけど、ここから出られる。行こう。母さんに会うんだろ。モンスターが出たら俺が守ってやる。銃ないけど」
「うん」
俺とリリフは狭い抜け道の階段を2人で降りていった。




