【Bグループのリーダー】
(今は三時半くらいか。集まりは五時からだから、もう少し時間があるな)
講義を終えて昼食をとったはいいが、この心地良さについつい眠ってしまったらしい。
グレースが座っている席の、目の前のテーブルには、読みかけの本が開いたままの状態で置いてあった。
これは確かにさっきまで、自分が読んでいた本である。
(まいったな。こんな場所で寝るつもりは全くなかったんだけど。思っていたより、俺もだいぶ疲れていたらしい)
今は昼の時間帯よりも少しばかりずれているためか、ここのカフェには客がほとんどいなかった。
つまり、かなり静かな環境なのである。
自分の意識が消える前の記憶をたどってみると、おそらく30分は寝てしまったことだろう。
少し前まで隣にいたはずの客も、もう帰ってしまったみたいだ。
(まぁ、無理もないか。ここ最近まともに寝れていなかったからな。明日は……ん?)
一瞬視線を感じ、顔を上げた。
だが周りを見回してみても、特に変わった様子はない。
(あー本当に疲れてるんだな。とりあえず部屋に戻って、風呂でも入るか。集まる時間まで、まだあるし)
グレースは先ほどの読みかけの本を鞄に仕舞うと、ゆっくりと席を立った。
(リン……カヲルに伝えといてくれたかな)
カフェを出ると、すぐ横にはちょっと広めの広場がある。
昨日はここでたまたま級友に会い、今日の午後五時に4号館の5Fフロアのグループの部屋へ集合するように伝えた。
この学校の敷地内には大きな建造物が沢山存在するが、1~3と7~12号館が主に生徒の寮で、4~6と13、14号館がそれぞれのグループが活動する施設になっている。
基本授業などを行う講堂は全部で22棟あり、他に喫茶店や公園、病院や服屋といった様々な設備が用意されていた。
昔はこの広さゆえによく迷子になったり、行く講堂を間違えて授業に間に合わなかったりしたものだが……。
この学院に自分が来たのは、確か八歳のときで、いつしかここでの暮らしは当たり前の生活へと変わっていった。
自分同様、学院にいる生徒の多くは、幼少時ぐらいから、すでに両親を亡くしている者ばかりだ。
うちのグループのメンバーでも、確かリンは母親が、カヲルは父親が一応いるらしいのだが、他のメンバー二人のご両親は、先の戦争に巻き込まれて亡くなったらしい。
二人ともかなり幼かったから、当時のことをよく覚えていないらしいのだが……。
そうこう色々と考えているうちに、自分の部屋の前に着いた。
ドアのノブをまわしたが、鍵が掛かっているのか開かない。
まだルームメイトは帰ってきていないみたいだ。
グレースは部屋の鍵を出そうと、ポケットを探る。
ふと……今回の企画を思い返した。
けっこう無謀だとは思うが、期間は短いし、そんな危険はないだろう。
どちらにせよ、生徒は学院の命令に従うしかないわけだし、過去にはもっとやばい時だっていっぱいあったんだから。
(二人なら、俺らがいなくても、きっと大丈夫だよな……)
鍵を回すとガチャリといつもの音を出した。
そしてドアが開き、グレースは中へと入っていった。




