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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第1章 そして物語へ
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【ルームメイトのカヲル】

 この世界の大陸の北陸部分には、二つの国が存在していたが、今は一つしかない。

 それは10年ほど前、国と国との戦争によって一つの国の勝利とともに、もう一つの国は滅亡した。

 戦勝した方の国でも、現地へ向かった大人の多くが帰っては来なかった。

 ここは元々小さな国なうえ、大国だった対戦国が滅亡し、北大陸の人類は一気に減少してしまう。

 そしてここは……子供ばかりの国になったんだ。



 * * *


「おっ、リン。帰ってたのか」

 後ろを振り向くと、そこにはルームメイトのカヲルが立っていた。

 カヲルが門限前に帰っているとは珍しいな。

 最近はいつも帰りが遅くなるのに。

「お帰りー、俺は珍しく講義が早く終わったんだ」

「そんなら俺は、もっと遊んでくりゃ良かったかなぁ」

 この学院の生徒には課せられた多数のルールがあり、その中の一つに寮の門限というのがある。

 夜八時の門限の時間には、必ずどちらかが部屋にいて、寮長からのコールに出なくてはならない。

 間に合わないと寮長に厳しく叱責されることになり、一ヶ月間自分たちのいるフロアとトイレ掃除という、ちょっとしんどい罰則が待っていた。


「最近の相手は、やっぱりリリフ?」

「まぁ……」

 カヲルは少し気まずそうな顔で答えた。

 リリフとは二歳年下の俺の妹の名だ。

 今、俺の目の前にいる男、カヲルは、妹のリリフに好意を持っているらしい。

 そしてリリフの方もカヲルと一緒に過ごすのは満更でもないようだ。

 かわって俺は、幼い頃のように二人に構ってはもらえなくなってしまったのだが。

(しかしこれも、妹と親友の恋路のためだ。致し方ないと思うのさ)


「あ、カヲル、話は変わるけど、グレースが明日の五時に、グループの部屋へ集まれって言ってたよ」

「んー……探索か?」

「おそらくね」

 カヲルの言葉に俺は頷いた。

 10年前の戦争で、大きな痛手を負った国。

 急激な人口減少に伴い危機感をもった国のトップは、教育の場となる『学校』を建設し、一定の年齢になると子どもを学院に入れることを義務付けた。

 そのため、この国の子供は八歳までには必ず学院に入学させられ、20歳以上になって初めてここの生活から離れることが出来る。


 親から子を長期間引き離すのは、少々酷かもしれないが、実際にこの国の子供の六割以上が孤児だから、逆に丁度良かったのかもしれない。

 戦争で両親が揃っている家庭は少なくなってしまったのだ。


 また、学院の中では生活するために必要な全てが揃っており、巨大な街そのものでもあった。

 この中だけで生活ができてしまうので、学生の多くはもちろん、教授ですらここ10年間まったく外に出ていない者もいるくらいだ。


 そしてある程度、成長した子どもたちは、本人の能力や希望に合わせて、専門的な科に振り分けられる。

 今現在16歳である俺はというと、探索チームという少し特殊な科に所属していた。

 探索チームは15歳になると、学院の指令に従いながら、一定期間外に出ることができるようになる。

 グループはそれぞれ五、六人で組んでいて、自分がいるのはBグループ。

 学院からはめったに出ることができないこの国の規則の中で、外へ行ける唯一のチャンスがこの探索なのだ。

 俺はいつも楽しみでしょうがなかった。


「ふ~ん。まぁ、そろそろかなとは思ってたけどね。しばらくはリリフとも遠距離だな」

 カヲルは外への興味ゆえにこのチームを選んだと前に言っていたが、今は別の理由で外にはあまり行きたくないようである。

(ま、妹が要因なのは明らかだけど)

 そんなに離れたくないもんですかねぇ。


「ハァー……」

 ついぞ深いため息をついたカヲル。

「そんなに行きたくなければ残ったら?」

 これは前にも言った言葉だ。

「まじで単位落ちるって」

 カヲルは冗談ではすまないといったような顔をする。

 単位を落とすと進級できないことは言うまでもない。

 つまり来年は俺と同じ学年となるわけで……。

「同学年になったら、同じクラスになれるといいな?」

「ほざけ……明日の五時だよな。絶対に行くさ」

 カヲルはそう言って自分の部屋に入って行った。


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