【軽い……】
「あ〜疲れた。というかマラカナって何か嫌な奴だったなぁ」
俺は管理ビルから出て、すぐにみんなのいる個別室まで戻って来ていた。
そしてマラカナとのやり取りの続きを説明したとこだった。
「あれから随分遅いなとは思ってたが、結局ダラダラくっちゃべってたわけか。そんな軍の頼みなんて断りゃ良かったのに」
コロアはそう言った。
「ん〜軍人って言うから最初は緊張したけど、なんか途中からどうでも良くなって、断ってもずっと煩そうだし、もーいいやって」
「もーいいやって、教授にもタメ口になってるぞ、リン。しかし、その施設の機密データ? 何でいるんだろうな」
グレースは言った。
「分かんない。メンドくさいから聞いてこなかった」
「いやそこ重要じゃないの、兄貴」
俺が戻ってからもずっと黙って聞いていたリリフだったが、今初めて口を開いた。
「ん〜なんていうか、色々とびっくりすること聞かされ過ぎて頭がスパーク。もう何も考えられない」
「そこ諦めるなよ」
「だってコロア教授、俺はクローンで兵器でしかもなりそこないなんだって。命をなんだと思ってんだかって怒りも結局戦争が起きる前のことだし、当の父さん本人も実験体にされてた被害者なわけで……もうどこに怒りをぶつければいいんだか……」
俺はそう言ってテーブルの上で前かがみに寄りかかり思い切りだらけていた。
「結局、クローン胎児ってなんなんかな。子どもになるの? それとも本人そのもの?」
カトレアは聞いた。
コロアは答える。
「簡単に言や、DNA上は本人のコピーだな。だからリンは将軍と同じ遺伝子だから、実際のところリリフの兄じゃなくて叔父だな」
「叔父かぁ」
リリフはこんな若い叔父さんは嫌だなぁと、言った。
「じゃあユナも甥っ子になるのか?」
「戸籍上はね」
ユナの叔父……なんだか不思議な感覚だ。
みな親とは死に別れであったり、生きていても小さいうちから長く引き離されているためだろうか。
俺から色々と聞かされてもあまり動揺した様子は見れなかった。
小さいうちから学院にいて親という存在はとても希薄になっている。
リリフもみんなも実感が持てないのだろう。
「コロア教授、結局その軍から頼まれたことが《探索》の活動になるんでしょうか」
ワイズは質問をした。
「いや、どうだろ。軍から正式に学院に連絡が入ってから決めようかね。前回みたいに《研究》チームに良いように利用されてもシャクだしな。それに極秘任務つってたからなぁ。最悪アパレル君と2人で行けと言ってくる可能性も……」
コロアはそう答えた後、まだ学院にバイクあるから突っ走れば日帰りで帰ってこれるのでは? と言っていた。
俺はかなり複雑な気持ちでいたが、とりあえずユナがグリル村で『気をつけろ』言っていたことが少し分かったような気がした。
ちなみに俺がグリル村でユナに会ったことやレミナの森の件は、今でもグレースとカヲルにしか伝えていない。教授含めここにいる女子3人は知らないままだ。
(アプは別の視点で知ってるかもしれないけど)
「しかし、今までリンに関してはノータッチの放置の放置だったのになんで今頃コンタクト取って来たんだかねぇ。なんか企んでんのかね。将軍は」
コロア教授は独り言のように呟く。
「そこ疑問だったんですよね。なんで今頃になって……それに人体実験してた資料の件も今更なんなんでしょう」
グレースはそう言って、う〜んと口に手を当て首を傾げた。
「そうだなぁ、リンを試してるとか」
「その可能性もあるなぁ。カヲルは最近親父さんに会ってるのかい?」
ボソッと答えたカヲルの言葉にコロア教授は答え、今度は逆にカヲルに聞いた。
「えっ、いきなりうちの親父の話? 当然、8歳でここに来てから一度も会ってないっすよ。最近は連絡すらしてないから生きてるのかすら……」
急に矛先が自分に向かって、カヲルは少し慌てた様子で答えた。
「ふむ。まぁカヲルの親父さんに聞けば一発で分かるかもって思ったんだがな。将軍時代の生物兵器開発の研究主任だったし。今は他生物(モンスター関連)の方、アパレル君のご両親の仕事を引き継いでるって聞いてるから色々と知ってそうだ」
「えっ! カヲルの父ちゃん、うちの父さんと仕事してたの⁈ 今はアプの両親の仕事してるの⁈」
俺はびっくりして声を張り上げた。
「マジっすか。俺、それ生まれて初めて聞いたんすけど。研究者ってしか聞かされてなかったし」
教授やカヲルの言葉にここにいる全員が驚いていた。
「あ、やべ。これトップシークレットだった。まぁここまで知られたら別に同じかぁ、ははは。とりま、みんなここで聞いたり話したことは極秘な〜? 頼むよ〜」
また詳しいこと分かったら連絡すっから…と一言加えて、教授は笑いながら部屋を出て行った。
「……軽い」
閉まったドアに向かって思わず呟いたグレースの言葉に一同はため息をついた。




