【心が痛い】
「少し気が休まりましたか?」
隣の部屋から戻ってきた俺にマラカナはそう言って、座っていたデスクから立ち上がった。
「ちょっとは」
マラカナはその足でこちらへ向かって来る。そういえば先ほどまでいたはずのギアス? という男性はいなくなっていた。
「そうですか。では用件に入りますね。先ほど少し伝えましたが、ロットの今は閉鎖されている将軍の施設まで行って欲しいのです」
マラカナは俺の曖昧な答えに気にもせず、本題に入った。
「父さんの施設?」
「そうです。そこには何百年も前から行なっていた実験の膨大な資料が置いてあります。それを国や学院には伝えず極秘に持ってきて欲しいのです。もちろんあなたがロットに出張に行くことに関してはこちらから学院にはうまく言っておきますので」
マラカナはそう言って、最後にお願いしますと付け加えた。
「なんで俺に?」
素朴な疑問だ。
「ん〜、消去法といいますか。気を悪くしないでくださいね。今現在ユナもレミナも不在で頼めるのがあなたしか居ないのです。ソルトウェルトは自由に動ける身ではありませんので。まぁ国からの監視がきついんですよね〜その点あなたなら、全く国は気にしてませんから。兵器のなりそこないだし」
最初は俺に対しかなり丁寧に話していたマラカナだったが、段々と言葉違いが雑になってきている。
(それになんか、最後の方失礼なこと言わなかった? この人)
今までのやり取りからも分かるが、きっとこのマラカナという人は心底好きにはなれない類の人間だな…と俺は思った。
「別にあんたが行けば」
俺は面倒くさそうに答えた。
「あ〜私が行っても良いんですけどねぇ〜なんていいますか、入れないんですよ。中に」
「はあ?」
俺も態度がかなり悪くなってきているなと自分でも思う。
(まーいーや。この人にどう思われても。)
「セキュリティがね。つまり将軍のDNAが鍵になってて、扉開かないし私だけじゃ無理なんですよね。あなたも私とロット行きたいですか? 嫌ですよね。いつもの仲間がいいでしょう。まぁレミナいれば良かったんですけどね。ユナが連れてどっか行っちゃったし。今あの2人どこにいるんでしょうねぇ。もしかして知ってます?」
「えっ」
俺はドキりとした。
「知るわけないか。あの2人今頃海でも越えて、別の国にでも行ってるのかなぁ。やっぱり人気があるのはピストシア帝国ですかねぇ。あの国はすごいですからねぇ人口も発展も」
「ピストシアかぁ」
(俺も行ってみたいなぁ)
なんだか楽しそうな国だなと思ったが、完全に本題からズレている気がする。
「ま、そういうことでね〜お願いしますよ。どうせ学生って暇でしょう? ちゃちゃっと機密のデータだけもってきてくださいな。まぁ量もすごいし何取ってくるか分からないだろうから《研究》チームのアプにも手伝うようお願いしておきますから」
「えっ、アプ? な、なんで」
俺はこの人の口からアパレルの名前が出てきて驚いた。
「戦争の前は同郷だったんですよねぇ。あとギアスと同級生で弟の元彼女だったので」
「そ、そうですか」
なにか今、心にズンっと来た。
胸がズキンと痛んだ。
「わかったよ。なんかよく分からないけど、父さんが困ってんだったら機密データくらい取ってくる。もういいでしょ。詳しくはアプに言っておいて」
俺はマラカナにやる気なく伝えて、答えも聞かず部屋を出た。




