【リン編】
思えばあの時、もっと彼の話をきちんと受け止めていればと後悔したのは、随分経ってからのことである。
ユナはあれから二度とここへ戻らなかった。
突然の失踪。
消息不明。
そんな噂が学院内を騒がせていた。
けれども彼の行動の詳細は誰も知らされておらず、学院から出て行った理由すら分からないまま。
『ちょっと、これから出るところがあってね』
そう告げたユナは、そういえばどこか少し寂しそうだったと、今頃になって気がついた。
彼はとても優秀な生徒で、生徒からも教授からも一目置かれていた。
そんなユナが、突然失踪するとは到底俺には信じられなかったのだ。
俺にとってはユナは兄のような存在だったし、彼も俺を弟のように接してくれていた。
それゆえ俺はとてもユナを慕っていたんだ。
唯一彼の行動の理由を知っているとすれば、何かを命じた国か、軍関係者であるユナの叔父だろう。
彼の叔父はこの国で権力を持った将軍の一人で、この学院の正式な管理官でもあった。
しかし、ユナが失踪したことが発覚すると、彼はすぐに軍部へと戻ってしまった。
今現在、ここの管理官は国の代表理事の一人が受け持っている。
『いつか僕との因縁も分かる日が来るだろう』
あれはどういう意味だったんだろうか。
今でも俺には解らない。
もしユナがどこかで無事に生きていて、いつか会うことができたとしたら、俺はあの時の言葉の意味を、今度こそきちんと聞きたい。
それまでこの話はしばらく置いておこうと思う。
それももう、ニ年も前の話になるんだけど……。




