【ちょっともどかしい気持ち】
グリル村に来て2日。
今日はもう夕方に差し掛かっていて、あと少しで1日が終わろうとしていた。
ここはのどかな村だった。
宿屋、道具屋、食事処が二軒、それと小さな診療所に民家が10戸ほどのこじんまりとした村だ。
ここの人たちは俺たちを歓迎してくれた。
「学生さん、偉いね。こんな遠いところまでようこそ。ここはストゥートからとても遠いけど、国の貨物車で物資がすぐに届くんだ。それもこれも学生さんたちが頑張ってくれてるおかげなんだよ。学院の方からもいつでも受け入れられるようにとお願いされてるんだ。ささ、どうぞどうぞ。何名様かな? お部屋はいっぱい空いてるよ〜」
村の宿屋の主人はそう言って、先日夜に突然訪ねた俺たちを快く受け入れてくれた。
アプを診療所に届けた後だからもう夜の6時をまわっていた。
「学生が頑張ってると物資が届くんですか?」
俺は訪ねた。
「学生が訪ねてきて村を利用してくれると、後で国から支援が届くんだ。その支援だけでこの村は1年は保つんだ。だから、学生さんがいつも来てもいいように準備してるんだよーとてもありがたい。ささ、どうぞどうぞ。今回は2人だけかな? 珍しいね」
「あ、いや、後から4人来ます。到着は8時を過ぎるかも……」
カヲルの言葉に主人は「いいよいいよ大歓迎」と何部屋か用意をしてくれた。
今までロットの街を利用していて考えたこともなかったが、そういう仕組みがあったのか…と今更ながら納得した。
今日は朝にアプが目を覚ましたと連絡が入り様子を見に行ったが、体の方はまだまだ辛そうで少しだけ話して病室を出ていた。
その時アプはこのところ課題に追われひどい寝不足で体調が万全ではなく過労で倒れてしまった。みんなに迷惑をかけたと謝っていた。
(どうりで……《研究》チームってやっぱり大変なんだな……)
俺はその時アプの苦労を知って胸が痛かったが今はゆっくり休んでとしか言えなかった。
今日は村の人の畑仕事や民家や村の掃除など仲間のみんなで手伝いながら1日を過ごしていた。
その間もアプのことが頭から離れず、かといって病室に行くこともできずにどんどん時間が過ぎていき今はもう夕方の5時だった。
(《研究》チームやめた方が……なんて勝手に言えないし。そもそも俺が口出しすることじゃないよね。恋人でも家族でもないし……)
ちょっとしょんぼり……していた。
「リンリン」
「えっ……?」
突然名前を呼ばれた気がした。
「リンリン♫」
「はい? リンリンって俺? ってカトレア⁈」
そう呼んできたのはいつも無口なはずのカトレアだった。
(ってかリンリンて誰ー⁈)
心の中で誰かが突っ込む。
「リンリン。アプ元気だった。体はまだだけど、明日には動けそうって! じゃあね!リンリン」
そう言って、カトレアは上機嫌で俺の横を通り過ぎて行く。
(いつものカトレアじゃない。でもなんか楽しそうだしいいか。あんなに彼女笑ったりしたんだな…お人形みたいな子だと思ってたんだけど……)
お陰でちょっと胸につかえていた何かがスッキリした気がした。
カトレア様々といったところか……
自分がウジウジと考えていたことがバカらしくなってくる。
(今は仲間が無事で元気ならそれが1番だ。色々考えるのはやめよう)
俺もそろそろ宿屋に戻ることにした。
みんなもきっと夕食のために集まってきているだろう。俺はそのまま来た道を戻る。
(でも、リンリンはないわー……あのまま彼女の中で固定になっちゃってたらどうしよう……)
胸のつっかえは取れたがまた違う悩みのタネができたような……とは思ったがあまり考えないようにして歩いた。




