【意外な訪問者】
(レミナ)
(ゆな)
(リン君と同じ顔)
(そしてカタコトのストゥート語を話す少女。7〜8歳くらいの容貌……もしかしてやっぱりあの子は……)
自分も……噂には聞いていた。
聞いていたが、たまたま自分が生物やモンスターの調査に行った場所にたまたま彼女が現れるなんて……あんな広い大陸でそんな偶然があるだろうか。
(上に報告する? でも確信がない。グレース君から聞いた話では、もう国は動いている。もし彼女たちが移動していなければすでに見つかっていてもおかしくない。けど、まさか……ホントに?)
森で単独行動により倒れ救出されてからもうまる1日は経つが、まだトイレ以外ベッドから起き上がれていない。
アパレルはグリル村に来た次の日の朝に意識が戻っていた。
学院へ帰還を命じられたとグレースから説明を受けた際、あの後の一部始終も聞いていた。
(グレース君は私のことはうまく伏せて、学院に報告してくれていたという。そしてリン君達にも…私の勝手な行動で本当に申し訳なかったな……)
森の中であったことも話そうかと悩んだが、迷惑をかけた上みんなをこれ以上…《研究》チームや自分の目的に振り回してはいけないと口を噤んだ。
(森でのことは私しか知らない。他にあの子の目撃者はいないし、ヘタなことは言えない……)
もうひとつ気になっていることは管理所ではあれだけ頻繁に報告を求めていた《研究》チームが、森での一件以来一度も通信も履歴もないことだった。
(何かあった? それとも私の体を配慮して通信を規制してくれているのか…いや、あまり信頼はできない。なんせ私の両親も利用されるだけされて危険な目に……)
体が思うように動かない上、自分の腕には点滴がつながれたままでトイレに行くこと以外何もすることがない。
今はただ頭をフル回転させて思考を巡らせていた。
コンコンとドアが鳴る。
(誰か来たのかな?)
「はい。どうぞ」
カチャっと音ともに入ってきた。
「あ、アプ……さん、だいじょうぶ?」
「あ、カトレアさん?」
驚いたことに中に入ってきたのは、基本無口であまり喜怒哀楽のないカトレアだった。想像してなかった来客に少し驚き言葉がつまった。
「あ、ありがとう。まだ体は動きにくいけど、だいぶ良くなってきた気がするよ。お医者様もこのまま休んでれば明日には動けるようになってきっと大丈夫だろうって教えてくれたわ」
「それは良かった……」
…………
「あ、あの……」
少し間があったあと、再びカトレアは話し出した。
「わ、私言葉、変だから聞こえにくいかもしれないけど、ごめんね。とりあえず無事でよかった。それだけです」
そう言ってカトレアは病室を出ようとした。
「え、えっ、ちょっ、ちょっと待って!」
(それだけ⁈)
と、心のツッコミが出ていた気がした。
「あ、あの言葉全然変じゃないよ。それと心配してくれてありがとう。わざわざ来てくれて……」
彼女の言葉は標準語だが、確かに少し訛りがある。
ただ無口な人であまり話すのが好きではないのだろうと勝手に思っていたが、どうやら違ったようだ。
お人形のように綺麗な顔だちをしている彼女は女の自分でも直視しづらいくらい妖艶な美しさを持っている。
「私の言葉、変だから。学院に入った時からみんなと違ってて、はずかしいです。」
見た目の印象と違って、控えめな性格の彼女の様子に自分は勝手なレッテルを張っていたんだなと気づく。
「ややや、全然恥ずかしくないよ。カトレアさんはどこの出身なの?」
「ウェイルズ」
「北の方だね。うん、確かにみんなと少し違うけどそれは『方言』って言ってその土地その土地のイントネーションが根付いた大事な文化であって、とても大切なもの。全然恥ずかしくないし、それに聞いててとてもキレイだよ。みんなだってそれぞれ話し方や言葉遣い、速さとかも違うでしょう? それも個性なんだよ」
「個性……」
「そうそう! 個性も自分が自分であるためのとても大切なもの。それは一つ一つみんな違うから個性なんであって何もかも一緒だったらただのコピーだもの。そしたらなんてツマラナイ世界になると思わない?だからカトレアさんは、どんどんみんなと話して話して! 私もこれからいっぱいお話ししたいわ」
カトレアは黙って聞いていたが、顔には静かに笑みが出ていた。気持ちは伝わっただろうか……
「あ、アプって呼びたいです。わ、私もカト、カトちゃんとか……」
(カトちゃん⁈‼︎)
思わず吹き出しそうになる。
(いやいやイメージ違いすぎるよ。なんか、カトちゃんは……やや、笑ったらいかん)
「アプで構わないよ。カトちゃん……カトちゃんでいいの?」
「実はちょっとはずかしい」
「あはは。無理して短くしなくても、カトレアで良ければカトレアって呼びたいな」
「アプ、ありがとう。カトレアで大丈夫。長くごめんね。また休んでね。元気になったらまた」
「うん、ありがとう! じゃあよろしくねカトレア。また後で」
カトレアはニコリと笑い病室から出て行った。
「いやーカトちゃんはないわ」
思わずまた笑ってしまう。このグループの人達ってなんでこんな楽しいひとばかりなんだろう…とベッドの上で1人アプは幸せな気持ちになっていた。




