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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第3章 ロットにて
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【メートリー】


「特にどうということもなかった」


 カヲルは、自身の腕に付いた随時連絡用のスキャナーに向かってそう告げた。


『わかった。こちらも同じく』


 そう返したのはグレース。


 ここはロットの西側に点在する廃墟の1つで元メートリーという街だった。


 生物がいないわけではない。

 そこに賑わうのは小鳥や虫や小さな魚たち。とても幸せそうだ。


 ただ人間だけがいない。

 それだけだ。

 ここはこの街の中心部分だろうか、容赦なく壊れ、朽ち、放置されたままとなった建物の残骸が、見るも無惨な姿でそこに存在していた。


 だが皮肉なことに人がいない環境のここの空気は非常に澄んでいる。


「そうか。お互い空振りだなぁ」


 カヲルはグレースとの会話を続けていた。


 変わってアパレルは、ここの生物のデーターを集積しながら書類と睨めっこだ。


 彼女には《研究》チームとしての課題も多いようで、やれ忙しそうな雰囲気である。


『俺たちはこれからここを引き上げて次に行く予定。ここ同様あまり成果は期待は出来ないだろうけど』


 グレースはモニター越しにそう告げていた。

 スキャナーは過去の人類が築いた産物の1つで、通信機の役割を持っている。

 いわゆる持ち歩ける電話だ。


 モーターバイクも過去の人間の発明による遺物だ。


「なぁ、グレース。この任務って何の意味があるんだろう。初めは楽だと思ったけど、今は半ば無駄足って気がしてならない」


 カヲルは言った。


『それは俺も聞きたいよ。まぁ気を抜かず頼む』


 グレースはため息混じりにそう言って通信を切った。


「ここはもう終わり?」


「ああ。後はアプ次第だな……と、リン。彼女はどこだ?」


「え?」


 言われて俺は周りを見回す。


 先ほどまで書類と睨めっこしていた彼女の姿はどこにもなかった。


「おかしいな。さっきまでそこにいたのに。探そう!」


 不安がよぎる。


 二手に別れて街中を捜索したが見当たらない。


「あとは森だけだけど……」


 メートリーの奥には自然と化した深い森が静かに存在していた。


「アプの両親は研究者だ。彼女の所属チームが両親と同じ研究内容である可能性は極めて高い。森の生物を調べに言ったのかも。確信は持てないけど」


 確率はかなり高いとカヲルは言った。


「つまり、彼女はここの生物というかモンスターを調べに行った可能性があるってこと?」


 俺は先程の2人の会話を思い出して言った。


「ああ」


 カヲルは肯定した。


「ヤバくね?」


「ヤバイしマズイ。森のモンスターたちは人が滅多に来ない分、気性がえらく荒い。それを彼女が知っているかどうか……」


 カヲルはそう言っ目を細め森を見た。


「って、アプが知ってるワケないじゃん! 昨日初めて外に出たんだから!」


 俺は焦った声で訴えた。


 この森は木々が入り組んで生えていて歩間が狭い。

 モーターバイクは使えない。


「マズイな。とりあえず彼女がまだ無事なのを祈る。森に入ろう」


 俺たちは駆け足で森の奥へと進んでいった。

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