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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
プロローグ
2/219

【ユナ編2】

(ふう、とりあえず、出発準備をしなくては……)

 急いで学生寮まで戻ってきた僕は、夜風ですっかり冷えた体で、寮の廊下を歩いていた。

「ん?」

 ふと、エレベーターの前で佇んでいる、二名の人物の方に目が行く。

 彼らは自分がいる所から少し離れた距離にいるため、顔などはよく見えない。

 しかしこんな夜更けに寮内をうろついている問題児といえば、僕の知るところでは思い当たる人物は二人……。


「おっと、いけね。忘れもんしたわ。ちと先に帰ってろ」

「ほいほい」

 そういった会話が交わされたかと思うと、長身で金色の髪を揺らした、タレ目が特徴の少年が、こちらの方へと走ってきた。

「よぉ、ユナ」

「や、やあ……」

 その少年は軽い挨拶を交わした後、僕の横を早々に通り過ぎる。

 彼の名前はカヲルという。

 かなり身長が高く、落ち着いた雰囲気のある彼だが、ああ見えてまだ15歳。

 僕よりも年下だった。

 そしてそこにいるもう一人は……。


「リン!」

 僕は、エレベーターが降りてくるのを待っている、青い髪の少年の名前を呼んだ。

「あれー? ユナぁ?」

 先ほどの彼よりも、若干幼稚なしゃべり方をするこの少年は、リンと言って僕とは少々関係がある。

 まぁ、昔からの友達というか、知り合いというか……。


「リンは今帰りかい?」

「うん。講義サボってたら教授に居残りさせられた。明日休みだから良いけどさ。ユナは?」

「あらら。まぁ、こっちも色々と野暮用」

「ふーん……そっか」

 そんな感じで他愛もない会話をしていたら、ちょうどエレベーター降りてきたので、僕とリンはそのまま中へと入る。

「ちょっと、これから出るところがあってね」

「出るって……もしかして()に行くの? こんな夜中に?」

 リンはそう言って驚いた顔をした。

 彼の言う()とは、学院(ここ)の敷地から出て行くという意味だ。

 この学院では、一部の許可された生徒しか外に出ることができない、絶対的な規則がある。

 そしてリンは、どんな生徒よりも外の話に興味を持っている少年だった。


「俺もユナについて行きたい」

「だーめ」

「むぅ」

 僕は笑って答えたが、リンはふてくされた顔をした。

 少し上の角度から見る彼の顔は、睫毛がとても長いのがよく分かる。

 本人は気にしているので直接言ったりなんてことはしないが、リンはかなり女性ぽい中性的な顔立ちをしていた。


「リン、七階についたよ」

「……」

「どうした?」

 リンたちの部屋がある階についたのに、なぜか彼は降りない。

 本当にどうかしたのだろうか。

「ユナ、俺だってもう14歳になったんだよ」

「あぁ、うん……そういや結構背伸びたよね。まぁ、リンは探索チームに所属しているんだから、イヤでもそのうち外に出られるだろう? 探索チームの現場同行は何歳からOKなんだっけ?」

「探索は15歳から。決まった期間しか出られないけど」

「なら、あと一年じゃないか」

「う~俺は今、外に行きたいんだよー」


 エレベーターが16階で止まった時、僕は寮の廊下へと降りた。

 そしてそれにリンも続く。

「まぁ、規則(決まり)だからね。来年までの我慢だよ」

「ちぇ……て、あれ? そういやユナは研究チームだろ? 外に出ても平気なの?」

 リンは不思議そうな顔で尋ねた。

 そう、研究チームには基本的に外出許可は下りていない。

「今回は管理官からの指示だから……」

「え、何かすげぇー……でもそんな大事なこと、部外者の俺に話していいの?」

 リンは首を傾けて言った。

 その仕草があまりにも子供っぽかったので、僕はついつい笑みがこぼれる。

 こうしていると、先ほどの叔父との会話がかなり遠くのことのように感じられた。

「むしろ君だから言ってる。そうだね、いつか僕との因縁も分かる日が来るだろう」

「いんねん? まぁ外、気をつけてね」

「ああ、ありがと。もうここへは戻ってこられないかもしれないけど……」

「え?」

 僕が自分の部屋の方へと歩いて行くと、リンは不思議そうな顔で、エレベーターの中へと戻って行った。

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