【えっ? なに?】
「レイドリックの父さんの家?」
俺はヘリの中で横に座るマラカナ・リヴァルに尋ねた。
彼女と会うのはすごく久しぶりである。
斜め前のヘリの真ん中にある席には、怠そうに座っているユナと、彼に必死で語りかけるレミナの姿があった。
こう見ていると、必死に親の気を引こうとしている子供のようで……とても微笑ましい光景だ。
ユナはとても面倒くさそうだが……とても。
「そうです。おそらくあなたの遺伝子でロックは開くかと……どうかお願いします」
マラカナはそう言って、にこやかに笑った。俺はこの作られたような笑顔に懐かしさを感じながら、思わず苦笑いする。
「と、とりあえず要件は分かった。困ってるのなら手伝うよ」
俺はとりあえず頷いた。
「ふふ……あなたは素直で優しいですね。ユナやソルトウェルトとは大違いですわ」
マラカナは再度ふふと笑った。
随分と機嫌が良さそうである。
何か良いことでもあったのだろうか?
俺は少し疑問になりつつも、「えっ? あ、そお?」と間抜けな声を出して、後ろ頭を無意識に指で掻いた。
「はは、単純で使いやすい」
「な、ちょっと!」
そう呟いたマラカナの言葉に思わず、突っ込みを入れる。
これは絶対バカにしてる言い方だ。
俺はむくれ顔をしてむぅと彼女から目を逸らした。
そんな様子にも笑顔で横に座るマラカナが少し不気味である。
しばしの間……
そして
「将軍への未練も……あなたへ移行できたらいいのに」
と、彼女はぼそりと呟いた。
しかしヘリの中では大きな音が立て続けに響いている。
はっきりいって、今の言葉は全く聞き取れない。
「えっ? 何?」
俺は聞き返した。
「なんでもないです。気にしないでください。それより、これからのことよろしくお願いしますね。シーモアのことも含めて」
「オーケー! 任せて!」
俺は元気よく答える。
「……単純。でも嫌いじゃないです」
ぼそっと消えそうな声で呟いたマラカナに、俺は再び聞き返したが返事は返ってこなかった。