【全員揃った!】
「まさか建物の中の怪物を全て倒してしまうとは……」
軍人であるマラカナ・リヴァルは感嘆の声を出した。
『建造物の中の熱量は先ほどからもう何も感じません。リンとレミナは徐々に戻ってきてますね。もうすぐこちらに到着するでしょう。森の生命体もかなりの数が減っています。残っているのは小さいレーダーばかり……きっと無害なモンスターだと思います! ピピッ!』
ある場所からやってきた、現代のオーパーツであるロボ……ピピツーはそう言ってクルクルと回っている。
「これはシーモアでも期待が持てそうですね」
ピピツーの言葉を聞いて、マラカナは口元に嫌な笑みを見せていた。
リンとレミナを利用する気満々な彼女の様子に僕は嫌気がさす。
そして思わずため息が出た。
「叔父の遺産を回収できれば、リンたちをシーモアに送ってもらえるのかな?」
僕は彼女に尋ねた。
「ええ、もちろん。あなたにはレイドリックに少し残ってもらいますが……」
マラカナはそう言ってニヤけている。
「あ〜はいはい。やりますよ。ここまできたら協力させてもらいます。叔父の残したデータの解析とかでしょ、どーせ」
僕は諦めた口調で告げた。
するとピピツーはふわふわと浮遊しながら
『解析なら私もお手伝いしましょうか? ピピッ!』と言った。
「それは助かります。あなたが手伝っていただけるなら凄い即戦力です。ぜひお願いします」
マラカナはそう言って、ピピツーに一礼した。
頼りにされたピピツーは嬉しそうにしている。
「あれー? ユナ?」
しばらくした後、ガサガサと音を立てて森の方から歩いてきた人物はこちらに気づいたのか声をかけてきた。
「ん? ユナか? なぜここにいるんだ?」
リンの言葉に後ろにいた少女、レミナは不思議そうな顔でそう言って僕に近づいてくる。
「みんなを助けに……」
僕は遅れて到着してきた2人にここまでの経緯と、マラカナに頼まれレイドリックに寄ることを叔父の死は伏せて簡単に説明した。そして、タケルはすでにピストシアに向けて出発したことも伝えたのだ。
「あ〜、ごめんユナ……俺たちのせいで、こんな所まで……それ以前に厄介なことに巻き込んだようだね」
リンはそう言って謝った。
彼のそばにいるレミナは「ふはは、すまんな! ユナ!」と笑っている。
「まぁ、リンたちだけのせいじゃない。半分はそうだけど、シーモアで厄介な事件が起きてるのは確かなんだ。できれば……2人に様子を見てきてもらいたいのも本音。単身で行ってしまったとーまのことも気になるしね。その前にちょっと寄り道するけど」
僕の言葉に2人は頷き、そのままマラカナに誘導されて軍用ヘリへ向かった。
「レイドリックか。初めてだな」
前を歩くレミナはそう言って目を光らせている。
「俺は父さんを訪ねて一度だけ。それ以外行ったことないな」
そう語るリンは苦笑いしながら、ちらっとマラカナを見た。
「そういえばそうでしたね。まぁ、街は学院に少し似ていて大きな建物ばかりです……あの城にはできれば行きたくないのですが」
マラカナは最後にぼそっと小さく答えたが、僕にはしっかりと聴こえた。
彼女の言うあの城とは国の権力者たちが集まるリヴァル家の居城のことであろう。
『どんな所か楽しみですね! ピピッ!』
「とても興味がある。レミナは知らない街に行くのが好きだ」
「二度目だけど首都訪問は俺も内心ドキドキするな……」
事情を知らない彼らは呑気に想像を膨らませて楽しんでいた。