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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
かの島では
190/219

【Bグループ個別室にて】

「リンはどこ行ったんですか?」


 グレースはコロア教授に尋ねた。

 ここは学院の4号館のBグループ専用個別室で、メンバーと一緒に先月の活動報告をしているところだった。


「ん〜、ちょっと頼みごとをした」


 コロアは防音設備の整ったこの部屋のデスクの上で頬杖をついて、気怠そうな目で答えた。


「そういえばピピツーと出かける準備をしてたな。なんかステータスがどうのこうの言ってたけど」


 カヲルは椅子に座りながら、ぼそっと呟く。


「お使いかしら?」


 ワイズは尋ねた。


「まぁそんな所だ」


 コロアはそう言ってニヤニヤしている。

 一体何をさせているのだろうか? グレースは少し気になったが黙っていた。


「そういや最近会ってなかったな、兄貴」


 リンの妹であるリリフは、カヲルの横で思い出したようにそう唱えた。


「あ、私も……リンリンとは全然……」


 書記を務めていたカトレアは、カリカリと音を立てて、記録をつけながら言葉を発した。そしてペンを置いて、じっとアプの方を見やる。


「実は俺も……今日久しぶりに会えるかと……」


 グレースもそう話し、アプことアパレルの方へ顔を向けた。それに釣られてみんなもじっとアパレルの方を見た。


「あ、私は昨日かな? 話したけど……えっ、なんでみんなで見るの?」


 部屋の入り口近くに遠慮がちに座っていたアパレルはみんなの目線の的になっていることに、少し戸惑いの表情を見せ答える。


「リンとは実際どうなの?」


 そんな空気の中、ワイズは直球で尋ねた。その様子にコロアは内心しめしめと……事の展開を見守っている。


「えっ、どうってどうとも……」


 アプは口に手を当て、向けられた矛先に対処できず慌てていた。


「告白されたんでは?」


 ワイズはさらに突き詰めてくる。


「え〜っと、去年そんなようなことは……言われたかな」


「それで? それで?」


 アプの言葉にカトレアは椅子から立ち上がり、目を輝かせて尋ねた。彼女はこういう話が好きそうである。


「えっ、や〜ちょっとここでは……」


 アプは苦笑いしながら、手の平を見せるように上げて答えをにごした。

 なんとも煮え切らない態度である。

 そんなアパレルの様子を傍目にコロアはため息混じりに心の中で少しリンに同情した。


「それより、グレース君とワイズはどうなの? カトレアは彼氏とかは?」


 アプは矛先を変えようと逆に尋ねた。


「えっ、あぁ、それは……」


 ワイズは答えようとしたが…


「はいはい! そこまで! ここは恋愛トークをする場所じゃないぞ?」


 そう言って、コロアは言葉を遮った。

 彼女の言葉に生徒達ははっとした顔をする。そして、スミマセン……とワイズやカトレア、アプの3人は謝ったが、それに際しコロアは『まぁ気にするな』とだけ伝えた。


 この部屋の中に少し気不味い空気が流れる。


「その辺の続きは各自でやりな〜? 私はもう戻るからな。と、そうそうなんかさ、リンの通信機もレミナの通信機も今不通になってるんだよな。なんかあったんかなぁ……」


 コロアはそう言って立ち上がり、部屋を出て行った。

 その場に残されたグレースたちは『えっ?』とした顔で閉じられた扉の方を見ていた。


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