【こんな所に?】
レミナと森に入ってから、随分と時が経つ。
猿モドキや蛇みたいなモンスター、ハチのような化け物も幾度となく倒した。
「どこだ? ここは……」
「どこですかねぇ〜……それよりレミナ! 早く助けてよ!」
巨大なクモのようなモンスターにトドメをさしたレミナは鞭をしゅるっと締まった後に、ふと呟いた。
俺はレミナのそばで横たわるクモに発射され体に巻き付いた糸を解く努力をしながら、いつまでも自由になれないことに焦りを感じてた。そしてモゾモゾと動きながら、慌てて彼女に救助を求める。
自分よりもずっと体の小さい女の子に縋るなんて……もう17歳になったというのになんとも情けない姿だった。
レミナはやれやれと呆れた様子でこちらまでやってきて、糸に手をかけて強く引っ張った。
「んー、思ったより粘着質な糸だなぁ。全くそのくらい避けれないのか? それにリン、まさか迷ったんじゃないよな? お前が先頭を歩いていたんだろ?」
レミナはそう言って、クモの糸をビチビチと容赦なく引きちぎっていく。
「入った時からすでにもう血迷ってます。というか、最初にレミナが追いかけるから俺が前になっちゃっただけでしょ。もうね、位置に関してはさっぱり分からないよ」
レミナの助けを借りてなんとかクモの糸から脱出した俺は、ため息混じりにそう告げて地面にしゃがみ込んだ。
この森に入ってから、今の今までずっと分刻みでモンスターを倒してきた……主にレミナがだけど、さすがの兵器である自分でも疲労感を感じていたのだ。
整備もされておらず、道といった道もない森の中では死角が多く障害物も多い。
そこまで名手でもない俺の銃の腕は、びっくりするほど役に立たなかった。
もはやただの攻撃の的だ。
いや、レミナの盾かな?
「はぁ、もっと強くなりたいなぁ……」
俺は呟いた。
「それなら、あと数年はここで修行しろ」
「長いわ!」
レミナの言葉に俺はすかさず突っ込んだ。ここに数年もいたら、確実に気が狂うだろう。
「あのさぁ……」
座ったまま上目遣いでちろっとレミナを見やる。
「なんだ? 腹が減ったか?」
「いや、減ったけど……あそこに、なんか建物が見えない? 気のせい?」
俺はそう言って、森のさらに奥の左上方向……に小さく見える人工の壁のような建物? に向かって指をさした。
「……ある」
振り向いたレミナはこんな森の中に? と首を傾けた。
「だよね? 行ってみる? 何かあるかも……」
得体の知れない場所にも関わらず、なぜか興味が湧いた俺はニヤっと笑った。冒険心が湧いたのか、森の中に飽きたのかは分からない。けれどもあの建物に行ってみたくなったのだ。
「こんな所に人がいるとは思えないが、捕まって食われたりしてな。ははは」
レミナはケラケラと笑いながら、まぁ行ってみるかと歩き出した。
「や、まさか……そんなことは……まさかね。ハハハ……」
俺はそう言いながら立ち上がり、先に行ってしまった彼女に慌てて続いた。