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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
かの島では
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【あんたも相当な仕様よ?】

 船室を出たタケルは上から船の様子を確認していた。

 前方、後方、色々と念入りにチェックしていた彼だが、しばらくして神妙な面持ちでこちらへ戻ってくる。


「やはり、追突した時にかなり損傷したようだ。これは直すのに時間がかかりそうだぞ」


「ふむ。困ったな。ここは電波が飛んでないのか、通信機は反応がない」


 タケルの悪い報告にレミナはさらに悪い状況報告を追加、そして通信機を見せた。確かに通信可能な緑のランプが消えている。



「あ、本当だ。学院のスキャナーも通信不可になってる。あちゃー、困ったな。最終手段は教授に……学院に救援要請だったのに……」


 俺は突然訪れた事実に不安な気持ちで項垂れた。これはけっこうヤバイ状況なのではないかと今更ながら焦りだす。


『ピピツーもラヴァから通信途絶えました。ここはどういう所なのでしょう? 確実に孤立してしまいましたね、ピピッ』


 過去の技術を集大成した恐るべき高性能のピピツーまでもが通信不可となると、これはもう外に助けを求めるということは諦めて他の道を探した方が良さそうな状況だ。


「まぁその辺は、実際に降りて確かめるしかないな」


 レミナは淡々と告げた。


「そうだね。降りてみよう」


 俺は彼女の言葉に同意して頷く。



 タケルは船内にあったロープを船の柱にキツく縛り、外に投げた。その際、ぽちゃんという鈍い音が遠くで聞こえる。


「うむ。この下はおそらくそんなに深くないな。とりあえず私が降りてみよう」


 タケルはそう言って、ゆっくりと……しかし慣れた様子でスルスルとロープを降りた。

 

 そしてバシャっと水の音がした後、腰に手を当て周りを見回している彼の背中が見えた。その姿に俺はタケルの男らしさを垣間見た気がした。


 彼、タケル・クロズワとピストシアの名もなき漁村で初めて出会ってから約1年……


 おそらく20歳になっていることだろうタケルは背が高く、筋肉質、目はキリッとしていて日焼けした肌に男気が強い船乗り、そして漁師でもある。


 俺は茫然といつもと変わらず動じない彼の仕草に安心感を覚えながら、それとは別に羨望の眼差しで見ていた。

 自分が持っていないモノを持つ者はやはり羨ましい。


「水は膝丈ぐらいだ。レミナでも大丈夫そうだな。ふむ、ボートを出す必要はなさそうだ」


「確かに」


「お、おう⁈ レミナすでに降りていたのか! 早いな! ははは」


 俺は2人の声ではっとした。

 気づくとレミナはタケルの言葉を待たずにすでに下に降りていたのだ。

 俺とピピツーはいつの間に⁈ と下を覗き込んで彼らを見た。


「ふむ、少し水は冷たいが歩けそうだ。リンとピピツーも早く来い」


 レミナが呼ぶ声に頷き、俺は慎重にロープを降りた。子供の頃の木登りを思い出す所業だ。


「おっ、本当だ。そこまで深くないね」


 俺は少し水温は低いが、自身の太ももくらいの位置で静かに波打つ海水を見ながら、ポツリとそう呟いた。


「私は腰まで浸かってるがな」


「あやや。レミナ着替え持ってきた?」


 この水嵩みずかさでも体の小さいレミナは体の半分が水の中だった。


「あぁ。しかし博士のNew特注服2着のみだ。まぁ、海から出たら即乾くだろう」


 レミナは水に濡れぬようカバンを肩の上に乗せている。


「確かに。博士の服は破れても再生するし、便利だよね。俺もユナが博士から預かっててこないだ受け取った服……今日何枚か入れてきたよ」


 俺はニヤッと笑いながら、腰に下げている学院の指定バックを見せた。


『うーん、便利ですね。ファンタジーさながら……といいますか、何でもありな世界ってのは非常に都合がいいものです。ピピッ』


 そばで浮遊してそう語ったピピツーに、お前も相当チート仕様だからな? と俺は思わず言い返していた。


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