【それどこから⁈】
ガンッと衝撃と共に不穏な音がした。
「タケル⁈ どうした!」
頭に響く仲間の声がする。
一体なにが……今どうなっているのか……
俺は衝撃で体が飛ばされ船の床に叩きつけられた後、そのまま思考停止し茫然としていた。
即座に体勢を立て直したレミナが船室に向かって走って行く姿を目で追い……
しばし経ってから……
……突然我に帰る。
「あ! って、つっ! いたたた、あぁもう!」
ワケも分からず床に放り出され、どこかを打ったのは間違いないがそれを気にしている暇もない。
『リンわ大丈夫ですか? ピピッ! 腕と背中に少し打撲損傷が見えます……ピピッ』
ピピツーは俺の横で浮遊して俺の体をスキャンしていた。
「まぁ痛いけど、これくらい平気。それよりも何があったのかな? ピピツーは問題ない? タケルさんは無事なのか……」
俺は独り言のようにそう呟きながら、ゆっくりと立ち上がった。
体の痛みはさておき、ふらつきなどはない。どうやら頭は打ってないようで、とりあえずそこは安心だ。
これなら動ける。
『ワタシは機体の防御フィールドにより守られています。タケルですね、熱センサーは感じています。ピッ……サチュレーションシステム作動、ピッ……ピッ、ピッSpo2:93%……呼吸少し低いですが、これはレミナと会話しているせいでしょう。健康状態は正常なようです』
ピピツーはそう言ってクルクルと自転しだした。
「ありがとう。一体何があったんだろう」
まだ海の上な筈だが、いつの間に周りはこんなにも霧が出ていたのか、薄らぼんやりと視界が囲われ、どんなに見回しても周りの状態が認知できない。
俺はとりあえず船の端まで行き、外を覗き込んだ。船の下には海の水が見えるが、海を渡っていたのだからこれは当然である。
しかし、ここだけ閉ざされた空間のようにまるで物音がしない。
すごく不気味だ。
ざざ〜という音だけが静かに響いていた。
「船止まっている? というかこの安定感……」
『何かに乗り上げているような気がします。ピピッ! しかし、スキャンできません。霧が濃すぎます。まるでユナの島のようですね、ピッ』
ピピツーの言葉に俺は頷いた。
船の下はハッキリとは見えないが、思いの外、水の色が……薄い?
もしかしてどこかに座礁したのだろうか……しかし、ここで1人(正確にはロボ1体プラス)で思考を巡らしていても拉致があかなかった。
「俺たちも船室へ行ってみるか。といってもすぐそこのドアの中だけど」
俺は苦笑いして指を差した。
『了解です。行きましょう。あ、その前にリン……』
ピピツーはドアに向かって行こうとした俺を後ろから呼び止めた。
「……なに?」
俺は振り向き、尋ねる。
『ワタシの見た目が5%低下! これは非常に重大です! リン、早く洗浄してください! ピピッ!』
「言ってる場合か! ってか、5%ぐらいガマンしろ!」
こんな状況にも関わらず、アホな言動をするロボットに「それどこから取ってきたネタだよ⁈ 怒られるぞ!」と、俺は突っ込まずにはいられなかった。