【最近のモンスターは】
「あれ? タケルさんは?」
俺はレミナに尋ねた。
「タケルはあそこにいるぞ」
レミナはそう言って、街の中央の方に人集りができている場所を指差す。
「えっ、あー……見えない」
彼は多数の集まりの中に紛れており、確認のしようがなかった。
『何をしているのでしょう? ピピッ』
ピピツーはふわふわと上の方に上がって覗いているが、彼の浮遊できる高さには重力の関係である程度限界があるらしく、やはりタケルの姿は見えなかったようだ。
「ハンマー投げ選手権に参加しているようなのだ」
そう言って、レミナはブンっと何かを振るような素振りをした。
「ハ、ハンマー投げ?」
『なにやら楽しそうですね! ピピッ』
俺とピピツーは少し興味が湧き度々聞こえる歓声の方へ目をやる……も人々の背中しか見えないため諦めるしかなかった。
「優勝できるといいがな。そういや、先ほどこの街の港で聞いたのだが、どうやらシーモアではモンスターの被害が増えているらしいぞ。」
レミナは少し眉間にシワを寄せて言った。
「モンスター……それってやっぱり……」
「そうだ。元々いたモンスターの凶暴なのが最近さらに目立ってきているらしい。これはユナも言っていた。」
レミナの言うモンスターは変異したロットの人たちではなく、最初から世界中にいる人外生物のことだ。去年船で見たサメのようなヤツや、ピストシアで襲ってきたスライムなど多種様々である。
そういえばモンスター協会という組織もあるのだと前に聞いたことがあるが、彼らでも苦戦しているのだろうか……
「元々この世界にいるヤツらだ。なぜストゥートやロットにいないのかが逆に不思議でならないが、ユナはラヴァの言っていた旧人類の核戦争で蔓延した放射能汚染が原因じゃないかと話していた。そしてモンスターらの巨大化、凶暴化が進んでいて最近では特に酷く、シーモアも人的被害が絶えないそうなのだ。」
「うへ〜そんな所に行かなきゃいけないのか……」
レミナの言葉に俺は苦笑いで答えた。
ここ一年、モンスターとの戦闘はほぼ行なっていない。銃の腕などかなり鈍っている気がするし、レミナのとの戦闘レベルの差はかなり開けているであろう。
しかし一学生の身分では当然勉強に励むしかないわけで、学院でもコロア教授のおかげで生徒の自由度は増したが、さすがに俺でも去年のあれ以来、国越えはしていない。
『とーまが向かったということは、チョコの仕入れ先はきっとシーモアなのですね! ピピッ!』
ピピツーはふわふわと浮遊しながら答えた。
「そういうことらしい。モンスターの凶暴化によりチョコの生産が間に合わなくなっているのかもしれない。それを食い止めるのが今回の役目だな!」
レミナは頑張ろう! と意気込みを見せていた。