【もう嫌い‼︎】
『あの外観……ドナルドさんの好みだとは思わなかったです。ピピッ!』
「意外な人が意外な感性を持ち合わせてたりするもんさ」
とーまの店を出た俺たちは、壁の道を抜けてバイクの所まで戻ってきた。これからモハンティアの街まで行って、レミナと合流予定だ。
『確かにそうですが……随分リンらしくない発言ですね? カンペでも落ちてましたか? ピピッ!』
「なっ! 失礼だな! 俺だってたまにはマトモなこと言いますぅ! これでも17歳になったんだから、4月で」
俺はふん……と鼻を鳴らした。
しかしカンペって、このロボットはどこからこんな言葉を集めてくるのか不思議である。変な言葉を教える犯人はカヲルだろうか……
『リンは4月生まれなのですか? ピピッ』
ピピツーは聞き返した。
「そうだよ。ちなみにレミナもとーまも4月生まれらしいよ? とーま16、レミナ15……1歳ずつ下がっていく」
俺は頭の奥底の記憶頼りに語った。
これは去年、病室で直接ソルトウェルトに確認したから間違いない。あれから彼の訃報を誰からも聞かされていないが、俺の中ではもう旅立ったものだと認識している。
『みんな同じ……これは偶然なのですか? それとも意図して?』
ピピツーは問い返した。
「そこには深いわけがあってね。『リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜[本編]』のユナのプロローグ冒頭で『もうすぐ春とはいえまだまだ寒い。ましてや人ひとりもいないこんな時間だ。上着を持ってくれば良かったと改めて後悔をした。』って、ユナが心の中で回想してしまったので、この物語の設定は全て春になってしまったんだよ」
俺は苦笑いして答えた。
初期設定というのはどこまでも付いてくるものだ。
『なんと! 随分とまぁ適当な設定ですね! ピピッ』
「そうそう。しかも、その次のページで俺が『俺だってもう14歳にだったんだよ』ってセリフをユナに言ってしまったから、もうね、みんな春生まれでいっかー! ってなったらしいよ。めでたしめでたし」
俺は半ばヤケになって答えた。この『リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜2』には、もう真面目な展開は期待しないことにしたのだ。きっとこれが正解である。
『なんとも、そんな適当な設定になっていたのですね!』
「ピピツーの出演だってちょい……のはずだったしね」
連れてくる話になったのも、流れ上? ノリ? なんだよねーと俺は追加した。
『えっ、そうなのですか⁈ 事実を知ってピピツー悲しいです……ピピッ。もう! リンも作者もキライ!』
ピピツーは目を伏せてロボットらしくない悲しい表情でバイクの座席に入っていた。