【どういうことだよ⁈】
「えっ……ロット⁈⁈」
俺は驚いて……とにかく聞き返した。
『そうだ。ロットのモハンティアにいるぞ。北西の港街だ』
レミナは中々綺麗な街だぞぉと付け加える。
いや、そんなことよりも……と俺は
「なんでそんなところに⁈」
と、尋ねた。
『タケルがそこに行きたいと言ったのだ』
「ちょ! とーまを手伝うという話じゃなかった⁈」
なぜ、タケルの言うことを優先するのか全く理解できない。
『うむ。私もそう思ったのだが、タケルがモハンティアに行きたいと駄々をこねて……』
彼が駄々をこねている所を俺は1度見たことがある。去年、アプの両親を探すためにレミナとピストシアの国を回ることになった時だ。彼は『ははは、私はフェルテルには行かないぞ! ははは、絶対だ! ははは』と軽い感じで分かりやすくこねていた。
「もう、とーまもレミナも全然教授の言うとおりにしてないじゃないか。なんで……」
俺は項垂れる。
『確かにそうだな。それはすまない。今からそちらの店に行くから……』
「い、いや、来なくていいよ! レミナは徒歩でしょ? 俺はピピツーとバイクで来てるから、バイクならモハンティアまですぐだし……でも、絶対そこで待っててよ?」
『分かった』
レミナは通信機の先で任せろと言っているが、あまり信用はできまい。
「タケルさんが駄々こねて帰っちゃっても、レミナはそこにいてよ?」
『ああ。分かった』
「よし! 絶対だからね!」
『ふむ。まぁ仕方ない』
「うん」
俺は少々しつこめに念を押した。このくらい何度も伝えれば大丈夫であろう……と。
『そこまでリンに私が愛されてるとは思っていなかったのだが、きっとアプに振られて今ツライのだな? まぁ仕方がない。とりあえず待っててやろう。仲間としての同情心からだが、しばらくは一緒にいてやっても良い』
「そんな意味で言ったんじゃねーよ! それにアプには振られてねー‼︎」
俺は大きな声で叫んだ。
彼女とこの一方通行的な会話がこれからもまた繰り返されるのかと思うと俺はなんとなく胃が痛い。
一緒に住んでいるレミナの保護者、ユナの心労や苦悩の辛さが少しこの身に染みるのを感じていた。