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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
リンとレミナと猫とロボ
176/219

【お久しぶりです】

 ドアのベルがカランコロンと鳴った。

 俺とピピツーはさっそく店の中に入る。


「やぁいっらっしゃい。お、君はリン君じゃないかい。久しぶりだね」


 店の玄関に入った所で棚の整理をしている店員らしき中年の男性が話しかけてきた。


「ドナルドさん! お久しぶりです!」


 俺は思わず笑みが溢れる。

 彼はアプ……アパレル・キーンの実の父親だ。名をドナルドという。

 11年前からずっと行方不明だったアプの両親と俺は去年、ある場所で出会うことができ、一緒にこの国に帰ってきた。

 そこからは腐れ縁である。しかも恋心抱く相手の親なのだ。当然俺にとって特別な存在である。


「元気そうだね。ピピツーも変わってないねぇ……良かった良かった」


 ドナルドはにこやかに答えた。彼は緑色の猫の顔がついたエプロンをしている。カトレアの作った猫の顔は、どうもこの店のトレードマークになったらしい。


『お久しぶりです! ピピッ! 今日はとーまはいないのですか? ピピッ!』


 ピピツーは尋ねた。


「実は彼はチョコの仕入れがうまく行かなくて、シーモアという国に行ってしまったんだ」


「えっ!」

『ピピッ!』


俺とピピツーはドナルドの言葉に驚きの声を出した。


「1人で行ってしまったのですか?」


「そうなんだよ。出て行ったのはもう2日前のことだよ」


 とーまはとても慌てていて、こちらの助言も聞かずに飛び出してしまったのだという。


「うそ……俺たち、教授の頼みでとーまを迎えに来たのに……」


 俺は予定が狂い項垂れた。


「そうだったんだ……彼は一昨日一通の電話に出てから、何やら大変なことになったと焦っていて、そのままシーモアの国に行ってしまったんだ」


 シーモアとはピストシア帝国の東にある少し小さめの国だ。シーモア人は働き者で技術力の高い国だと聞いたことがある。彼はそこに単身で行ってしまったというのだ。


「えーっ何があったんだろう」


 俺は意味が分からないまま呆然と立ち尽くす。このまま彼を追っかけるにしても……どう動こうかと。


『リン、レミナに連絡を取った方がいいのではないですか? ピピッ!』


 ピピツーは黙ったまま立っている俺の横で告げた。


「うん、そうだね。ドナルドさん、ちょっとレミナに連絡しますね」


 ドナルドは店の中でどうぞと快く了解してくれた。俺はお言葉に甘えてコロア教授から受け取っていた通信機で早速レミナにかけてみる。



『……はい? レミナだ』


 少しの呼び出し音の後に彼女は出た。

 そういえばレミナとは数ヶ月ぶりの会話である。


「あ! レミナ? 俺、リンだよ。あのさ、今どこにいるの? 実はとーまはもう2日前にシーモアに行ってしまったみたいなんだ」


 俺は率直に告げた。


『なんだと! そうなのか! 私はコロア教授からユナに連絡が来て、リンと一緒にとーまの仕入れを手伝うように言われたのだそして島からタケルに送ってもらって今……』


「あ、もしかしてもうピストシアの港にいるの?」


『いや、ロットだ』


「は? ロット⁈」


 俺は思いがけない彼女の居場所に、素っ頓狂な声をあげていた。


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