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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
リンとレミナと猫とロボ
170/219

【そういうわけで】

「うーむ。なんとも……真意の読めない返事だな」


 コロアは口角を片側だけ上げ、いやらしい顔つきでニヤニヤしている。


「だからイチャイチャはしてないです! それはカヲルとリリフだけです! 俺もあの2人みたいになりたいですが……って俺は教授に何を言ってるんだぁぁ……」


 そう口にした瞬間、俺は教授の散らかったデスクを両手でバンッと叩き、顔を下向きにして悔やんだ。


「お、おう。正直、お前の青ーい話を聞かされてとても戸惑ったぞ。先生は」


 教授は言葉とは裏腹にやたらニヤニヤしている。実際は心の中で笑っているに違いない。


「……なんの話でしたっけ?」


 俺は脱線した話を元に戻した。


「とりあえず、お前とーま迎えに行ってチョコの入荷手伝って……バイクあげるから。ついでにユナに連絡したら、レミナもピストシアの北の港で待っててくれるそうだ。3人と1ロボで頼むわ」


 コロアはそう言って、最後に楽しそうな旅じゃないか、とだけ付け加えた。


「わーい、バイク♪ってそういう問題では……それにとーまはちょっと苦手っていうか……」


「まぁ変態だからな」


「そう、そこなんですよ……」


 俺はモジョモジョと口を動かして濁した。


「しかし、ある意味……お前たちは同じ穴のムジナだろう? なんせ、兵……」


「それはそうですが……なんというか、ごにょごにょ……」


 俺はやたら目が泳ぐ。

 なんとも伝えにくい……というか彼と行きたくない理由がまた、あまり人に言いたくないもので……


「なんだ? どうした? なんでそんなごにょごにょと分かりやすく唱えているんだ?」


 コロアは不穏な顔でこちらを見ている。


「とーまは……たまに俺に迫るんです……」


 俺は観念して理由を伝えたが、自分で言った言葉がやはり恥ずかしい。

 はぁ……と途端にため息が出た。


「なんだ……あいつ生粋の女好きだと思っていたが、趣向を変えたのか?」


 少し驚いたようで、コロアは目を丸くした。


「いや、なんでしょう……それは俺が……ごにょごにょ……」


「リンは女顔だからなぁ……」


「はっきり言わないでください! 気にしてるんですから!」


 俺は教授に突っ込む。

 男っぽくない……顔つきは気にしているのだ。もっとグレースやカヲルのように、男らしく格好良く生きたい。


 せめてもう少し背があれば……と願うも身長はここ1年……全く変わっていなかった。


「まぁアパレルが気にしてないなら良いじゃないか」


 コロアはそんな俺の気持ちを知ってか知らずか苦笑いしながらそう告げた。


「元研究者である彼女は全ての生物をこよなく愛し、そして全てを認めていますからね。俺の顔なんか全然気にしてませんね。たぶん」


 アプ……ことアパレル・キーンとはそういう人間だ。少なくとも人の見た目とか背とか……それどころか、自分の衣食すらあまり気にしていない。


 研究や気になることに没頭するとまるで食事を取らない。俺はそばで見ていても彼女が倒れないか冷や冷やものだった。


 あんな綺麗な子だから……ワイズのようにオシャレをして着飾ったら、自分はさぞかし惚れ直すんだろうなと思っている。


 そして競争率は急激に上がりそうだ。


「なら、なぜ付き合えないんだろうな?」


 コロアはズバッと痛いところをついてくる。


「そんなこと……俺に聞かないでください!」


「じゃあ代わりに聞いといてやるから、とーまとチョコ探してきて」


「くぅ〜教授ズルイ! 分かりました! 行きますよ! その代わり……アプの気持ち!」


「交渉成立だな。ほいほい、探っておいてやる。はい、バイクのキー……よろしくぴょん」


 そういうわけで、俺はとーまをロットまでバイクで迎えに行くことに決定したのだった。


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