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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
エピローグ
166/219

【やっと、会えました】

 俺はドアのブザーを鳴らした。


「どうぞ」


 中からの声を聞いて、ドアを開ける。


「失礼します……あ、リンです」


 『ストゥーベル学院』に無事俺たちが戻ってきて10日……俺はある人物に会いにきた。


「やっと、会えましたね」


「会いに来ました」


 俺はある病室の一室にいる。


「ユナ君は……元気そうですか?」


「ユナもレミナもとーまも元気ですよ」


「……それは良かった」


 久しぶりに見た彼、俺の父であり、クローンの大元でこの国の将軍……ソルトウェルト・グレイダーだ。


「ユナから聞きました。もう危ないと。だから会いに来ました」


 俺は彼に告げた。


「そうですね……私はもう……命が終わります。リン……君には……命の終わりを取ってしまって済まないと思います」


 そう言った彼の顔は随分とやつれているが、こう見るとやはり俺に似ていた。

 俺はこの人のクローンなのだから、それは当たり前だが。


「レミナたちとこの星を見守る役目もいいかもしれないと思ってます、今では。もし嫌になったら、ラヴァにお願いしますよ。心だけでもね」


 俺はふっと笑う。


「なぜ君たちを作ったのか……分からない。けど当時の私も……実験体であった私にも仲間が欲しかったのだろうと……今になって思います。人類を救おうとか……そんな考えではなかったんですよ。10年前まではね」


 ソルトウェルトはベッドに腰だけ上げた状態でそう語る。

 これは……彼の物語だ。


「よく色々とあの手、この手を考えましたね。俺はあなたのクローンとはとても思えない。レミナも」


 俺は少し皮肉混じりに告げた。

 色々とあったが、今では彼にも感謝している。結果的にはこの国を救えたのだから。


 星の運命は分からないけど、きっとみんなで頑張れば変われるはずだと。


「ふふふ……少し……操作をしました。あなたとレミナには……私のような人間にはならないよう……もちろんとーまにも、ある遺伝子を感情面で出るように入れたんです。楽観的で、優しくて、楽しくて私が唯一心を許せた……病死した親友のね」


 ソルトウェルトはそう言って、優しそうに笑った。

 俺は初めて知らされた事実に彼をじっと見る。


「ユナの父の遺伝子もココに入ってるんですか? ユナとリリフ……俺とレミナ、とーまは……」


 俺は自分の胸を指で指して尋ねた。

 本当……この人の仕込みは凄すぎる。

 よくもまぁここまで先を考えて用意したものだと、ある意味感心した。


「ええ。まぁ、遺伝上だと近親者になりますね。少しですけどね。うまく出てくれて良かった。リン……来てくれてありがとう。あなたは失敗なんかじゃなく、私の自慢の息子なんですよ。もちろん……ユナ君もね。大事な息子だと思っています」


 彼はそう言って、ただただ優しく笑っていた。


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