【そこは言わなくて良いから!】
『リン! ラヴァには会えましたか?』
男性寮に入った瞬間、丸い黄色っぽいロボットに話しかけられた。
これは……あれだ。
俺をメインタワーまで送ってくれた、あの失礼なロボだ。
なぜ、男性寮にいるのだろう?
この03002号は女性寮のお世話ロボのはずである。
「03002号、会えたよ。ありがとう」
俺はとりあえずお礼を言った。
『リン、何かイイコトありましたか? さっきよりも幸福値が向上しています』
ロボはピピッと跳ねる。
「そんなことも分かるの⁈ 少しはプライバシーってものをね……」
もう色々と調べられるのは遠慮したい。
『リン、ここを出るようですね』
「あ、知ってたの?」
俺は目の前のロボに尋ねた。
『さっき、ラヴァから信号が来ました』
「便利だなー……」
機械同士の自動通信……つまり電話がいらない。これはコトが早くて楽そうである。
『ワタシもあなたと降りるように言われました! ピピッ!』
「えっ⁈ なんで⁈」
ロボの言葉に俺は驚き、ついつい張り上げた声で聞き返す。それは男性寮のエントランスで大きく響いた。
『ラヴァはあなたの気が変わったらすぐにココへ連れてこれるようにと、ワタシを一緒に送るようですピピッ』
「え、そこまで彼に気に入られてたの? なんでかなぁ……」
俺は苦笑いした。
あのAIも……意外としつこいなと。
『信号を送りました』
「えっ⁈ 彼に送ったの?」
俺は慌てて取り消しを要求したが、ロボは完了しましたとだけ告げた。
『ラヴァの返事です。あなたはその腰に付いている銃を使えば、ラヴァを倒すこともできたことを分かっててしなかった……優しいから心配だということです』
ピピッと03002号は答えた。
「あ〜そうか……気づいていたのね。そう、これさ、触ると機械壊れるみたいだからさ、投げれば……たとえラヴァといえどヤバイんじゃないかなぁとは思ってたよ。俺には超加速もあるからね。でも、する必要はないよね。彼も彼なりにさ、守ろうとしてたみたいだから……後は俺たち人間の問題だよ」
はは……と俺は自分で言って少し恥ずかしくなり、ポリっと頭の後ろを掻く。このクセは子供の頃によくやっていたユナから移ったものだ。
『ピピッ! 送信しました。ピピッ!』
「あーー‼︎ まじか! 今のは恥ずかしいから送らなくていいのに……本当機械って微妙な人間の気持ち分からないよね!」
俺はしまったぁしまったぁ! と大きな声で慌てた。その様子を不思議そうな顔で03002号は見ている。
『リンは人間とは言い難いです……どちらかというとプラナリ……』
「そこは言わなくて良いから!」
ロボの言葉に俺はとりあえず突っ込んだ。