【やっと会えた】
「あれ、ドナルドさん」
俺はメインタワーの外に出て、男性寮まで戻ってきた。
寮の入口にはアプの父であるドナルドが待っていた。
「あ、リン君……聞いたかい? 僕たちを急に明日解放すると……」
「ええ、聞きましたよ。今メインタワー行ってきました」
俺はにこやかに答える。
「何があったのか知らないけど、君がラヴァに何かしたの?」
ドナルドは信じられないという顔で尋ねる。
俺は首を振った。
「いや、非常事態みたいです。詳しくは聞かなかったので」
俺は詳細は話さないことに決めた。
ラヴァとの会話はここでは言わない方がいいだろう。
「そうなんだ……」
ドナルドはぼそっと呟いた。
「あ……」
俺は横からこちらに向かって歩いてくる女性に気がついた。
とても綺麗な中年の女性だ。
「セ、セシリア……」
女性に気づいたドナルドは、慌てて走り出す。
「ドナルド、やっと会えました。探しました」
セシリア……アプの母である女性は、彼のそばによるなりそう言った。
「まさか君までここにいるとは……」
ドナルドはとても驚いている。
俺は黙って2人を見守っていた。
「私からここに連れてきて欲しいと頼んだんですよ。いつかあなたに会えると思って」
「そうか、そうか……」
ドナルドはセシリアの前で涙ぐみ、慌てて顔を袖で擦っている。
「あ、俺はちょっと用事があるので……失礼します。お2人ともまた後で……」
俺はそれだけ告げて、彼らの返事も待たずにすぐに男性寮に戻った。