表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第19章 ラヴァ
157/219

【なぜ】

『娘とダンナをコロスぞ? って脅したら、何も言わずにすぐ取り掛かってくれたよ』


 あどけないが綺麗な子供の顔をした姿のAIはヘラヘラと悪気もなくさらっと語る。

 さすが機械だ……というところか?

 人間の感情というものが今の彼? からは一切感じられない。


「どうしてそんなことを……」


 俺は不穏な目でラヴァを見つめる。


『君を作った国はさぁ、ホントダメだよね。前の文明と同じことしてるよ。もうね、このまま野放しにしてたら、星がダメになっちゃう』


「否定はしないけど」


『ロット人? の人を実験して、君たちを作って……もう調子に乗りすぎだよ。だから、十数年前にここから何人かスパイを送ってあれ以上実験できないようにしたんだけどなぁ』


 そう言った彼の言葉でやはりこの『えーあい』が黒幕なんだなと俺は今ここで改めて認識をした。


「ロットの人をモンスターに変えるなんて酷すぎるよ」


 俺は訴える。


『ふふ。その判断をしたのはボクじゃなくて、マーシャだよ。もちろんロボット達を使ったけどね。でも彼女も調子に乗りすぎた。人間て外に出るとどうしてこうも欲深くなっちゃうのかなぁ。ウィルには悪かったね。あれはホント、攻撃型ってどうも融通が効かないっていうか……とーまをセシリアを装って呼び出したのもマーシャでね。彼女は色々と勝手に彼を探ってたんだ。攻撃型のロボには彼女を止めるよう信号を送ったら、とーまを攻撃しちゃうし、君を捕まえたのも最初はビックリだよ。やはりそろそろメンテナンスが必要だなぁ……不具合が起きすぎてる』


 彼はふぅとため息一つつき、最後にま、仕方ないね。あのコたちも随分古いからね……とだけ言った。


「不具合って……こっちは巻き込まれて体半分吹っ飛んだんですけど! 不必要になったら簡単に始末……残虐だな。10年前もモンスターに変えてから、とーまを暴走させたの?」


 ラヴァは俺の質問に頷いた。


『うん。戦争と称して、ロット人を討伐しようとしたからね。それはちょっと違うよね? だから、自分たちの作った化け物で彼らを殺してあげた。さすがにビビったのかここ10年はそこそこ大人しかったんだけど……』


「やることが……人間じゃない」


 俺はこの機械に嫌悪を超えて恐怖していた。

 だが、俺は彼? を倒せるだろうか。


 やろうと思えばできなくはないだろう。

 その方法も思いついている。

 だが彼? を不能にすることに意味があるだろうか。

 ここの人間たちは死んでしまわないだろうか……そう考えると何もできなかった。


『ボクは人間じゃないもの。まぁ強化薬の解毒薬? これは良いんだよ。うん、別にロット人を助けるのは問題ない。基本、温厚で争いが嫌いな人種だし。ただね、核兵器作っちゃダメだよね? これは全力でボクも止めるよ。さすがにね』


 ラヴァはそう言って、俺の前に着地した。

 彼? の足は裸足だった。


(まぁ、常に浮いていれば、クツはいらないのかもしれないけど寒くないのかな? あ、機械か……)


 そんな彼? の姿にいちいち気になり一喜一憂してしまう俺は、心の中で一人、静かに自問自答していた。


「ユナが前に言ってたけど、本当に核兵器を作ってるなんて……」


 俺はぼそっと呟いた。


『うーん、作ってると思うよ。あの国の地下から半端ない熱量を感じるし……警告したんだけどなぁ』


「軍は懲りずに、また……」


 呆れ顔の俺にラヴァはふわっと再び浮遊して、このタワー最上フロアの壁に何やら画面を出した。


 映し出された場所は首都レイドリックの映像だろうか。たくさん集まって何やら動いている軍人の中に、俺もよく知っているあのマラカナとギアスもいた。


『これは視察に行ったロボットからのリアルタイム動画だよ。ほらほら、見て? 彼らずっと君を探してるよ。しかもすでに戦争の準備をしている。やんなっちゃうよね』


 ラヴァはそう言いながら笑っている。


「俺を探すのに……なぜ戦争?」


『盗聴では4日後に軍が動くと聞こえたよ。なんだっけ……ユナ? と軍のリヴァル家が話してた。それはもう2日前のことだよ。でもね、あれから不思議なんだけど、もう彼らの通信が傍受できなくなっちゃったんだ。妨害されてるかな』


 AIであるラヴァはへへ〜と楽しそうにニヤニヤしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ