【よく分かんないなぁ】
この旧巨大地下都市の名前はとくにないらしい。ドナルドと一時別れた俺は、目的の場所である人間の女性寮までやってきた。
思ったより簡単に男性寮の外に出れたのだ。
『リン・グレイダー、お出かけですか?』
建物の入口に向かう俺に、そばにいた丸いロボットが話しかけてきた。
「そそ。出て良い?」
『どちらにお出かけですか?』
「女性寮」
『お気をつけて』
そう言われただけだった。
(別にいいのか? それとも俺が子供だから? うーん、思ってたよりずっとガードが緩いな)
女性寮の入り口から中に入った。
『ようこそ。リン・グレイダー、ここは女性寮です。誰かお探しですか?』
いきなり先ほどとほぼ同じ見た目のロボットが話しかけてきた。違いといえば…向こうの入口にいたのは青っぽくてこっちは黄色っぽいくらい。
「セシリアって人います?」
俺は黄色っぽいロボに尋ねた。
『セシリア? フルネームをお願いします』
「セシリア・キーン」
ピピピ……とロボットは何かを検索している。
『リン・グレイダー、彼女はここにはおりません。ここにはおりません』
ロボットは数秒してそう答えた。
「えっ、そうなの? じゃああの攻撃型の機械はウソついた?」
『機械はウソつけません』
ロボットはそう言ってピピッとまた音を鳴らした。
「この街にはいるの?」
『おります』
俺はぐいぐい尋ねる。
「じゃあどこにいるのさ?」
『これは言えません。言えません』
ロボットはふるふると体を揺らして、アピールをしている。これは拒否の反応だろうか?
「えーなんでよ!」
俺はしつこく訴えた。
『規約です。規約です』
「えーー何それ! どういうことだ……じゃあ言わなくて良いからせめて案内してよ!」
『かしこまりました』
「えっ⁈ いいの?」
ダメ元で無理を言ってみたが、そこはアッサリ要求が通ったらしい。
『こちらです。どうぞ』
黄色っぽい球体のロボはピピピ…と音を鳴らして、床が透けているような…ぼやけたガラスのような材質の道を真っ直ぐ進んでいく。
「うーん、機械ってホントよく分かんないなぁ」
俺は誘導するロボの後ろを少し早足で追いかけた。