【やっと見つけた】
う、ここは?
俺は寒気を感じながら目を覚ました。
冷たくて硬い床の感覚。
まだ目がぼやけているのか周りの状況がよく分からない。
もぞもぞと体を動かしてみるが、中々うまく動かせない。
体の節々に痛みを感じる。
一体自分に何が起きているんだろうと不安になるが、ハッキリしない頭では考えようもなく、とりあえず体が機能するまでしばらく待った。
『大丈夫? 目が覚めた?』
少し意識がしっかりしてきた頃、頭の上の方から声が聞こえた。
はっと、自分は床に倒れていることに気づく。そして腕は……けっこうなグルグル巻きにされて縛られているのだ。
俺は床に寝そべったまま声がした方に顔をあげた。そこには体育座りをした中年の男性がいた。
「ここは?」
俺は倒れながら男性に尋ねる。
「ここ? ここは地下都市だよ」
座っている彼は答えてくれた。
彼は誰かに似ている気がするがうまく頭が働かない。
「地下都市……?」
俺は彼にぼそっと口から言葉を出した。
「古い古い……かつて昔に栄えた旧文明時代。その名残さ。ここは機械の……そして機械に魅入られた人間の街だ」
男性はそう言うと、ゆっくり立ち上がり俺に手を伸ばしてきた。
俺は縛られたまま、彼の腕を掴みゆっくりと起き上がる。
「ありがとうございます」
中年の男性は「いやいや……」と答えて、またさっきと同じ場所に腰を下ろした。
俺は座りながらふと考えた。
確か自分はラマダンの街で、恐ろしく強い機械に襲われて……そうだ、自分は負けたのだ。それできっと地下都市? 機械の街に連れてこられた。
「君の顔は見覚えがある。もうだいぶ昔、何十年も前のことだが、僕と一緒に仕事していたヤツによく似てるよ」
彼はぼそっと語った。
「ヤツ?」
俺はすぐに聞き返すした。
「ソルトウェルト・グレイダー。彼は若くして出世した。部署は違うものの、彼はかつての僕の上司だった。」
自分のクローンの大元である父の名前だ。なるほど……と俺は納得する。
「君はリンだよね? 初めて成功した初号生物兵器」
俺は自分のことを初対面の男性にサクサクと当てられる。
だが、こちらも驚くことはない。
なんとなく彼の正体を知っているからだ。
「あなたは?」
俺はさらっと尋ねてみる。
「僕? 僕はドナルド。ドナルド・キーン。同じ捕らえられた者同志よろしく頼むよ」
彼は答えた。
俺は自分がこんな状況ながらついつい笑みが溢れる。
「やっと、やっと見つけた。アプのお父さん……」