【博士、頼むよ】
「博士いるー?」
僕は島の家から坂を下り、博士の家までやってきた。
そして入口から勝手に入り声をかけたのだ。
「ユナか。あの小僧は見つかったか?」
奥から島の天才科学者ことエップス博士が出てくる。
「いや、まだみたい。難航してるよ。じーぴーえすはリンに持たせるべきだった」
彼の質問に頭をかきながら僕は答えた。
レミナではなくリンに……グリル村で渡した時のままにするべきだったと。
「通信機もないのか」
博士の言葉に僕は一瞬表情がなくなる。
「……通信機?」
そして思わず聞き返した。
「あれにも場所を特定できる『じーぴーえす』はついておる。なんだ、知らんかったのか」
博士の言葉に僕は目を丸くして驚いた。
これは初耳だったのだ。
「ウソでしょ博士……先に言ってよ! レミナ達はラマダンで通信機は落ちてなかったと言っていた。街の人も見かけてない。そしたらたぶん……今でもリンは持ってるよ!」
僕は興奮しながら、博士に訴える。
リンが見つかるかもしれない。
「ほほほ。なら調べよう。こっちに来るのだ」
そう言って博士は手招きしながら、奥の部屋を指差す。
「マジ? 奥に入れてくれるの? 博士は絶対奥の部屋は見せてくれなかったのに……」
僕はさらに驚き、少し疑いの目で博士を見た。何か企んでたら嫌だな……このじいさんは……と。
「ほほほ。企業秘密じゃが、今は小僧のこともあるし特別じゃ! ほほほ。感謝せい!」
そう言って奥に引っ込んだ博士に僕はドキドキしながら続く。
博士のお店である部屋の奥……のさらに奥の部屋はとても広く、僕の研究室の3倍はある敷地だった。
しかも、科学的に見ても今の技術じゃ作れない驚くものが目に入る。
「これが博士の最新式のコンピューター……」
「そうじゃ。スゴイじゃろう」
僕は思わず近づいた。
そしてドキドキしながら、それを触る。
「スゴイ! 画面が……透けてる。通り抜けられる……どういう仕組みなんだ……」
僕は感嘆の声を出した。
やはり彼は天才である。敵じゃなくて本当に良かったと安堵するばかりだ。
「ほほほ。企業秘密じゃ。さて、ほらほら出たぞ。これが小僧の居場所じゃわい!」
博士は不思議な文字盤を空中に出して操作した。僕には理解不能な仕組みである。
「どれどれ……ウソ、これって……」
「まさに灯台下暗しじゃのう」
通信機のじーぴーえすに示された場所はよく見知った場所であった。
「いや、まさに人が行けてない場所だけど、ここなら……確かに見つからないはずだ。誰も入らないロットの北側だもの」
大国であるロットの商業施設であるティラタよりもさらにずっと北の位置にそれはあった。
僕はこれで手がかりができたと少し安堵する。
「そうそうユナ、これを作ったぞ」
博士は徐に僕に黒い小さな機械を渡してきた。
「何これ?」
思わず尋ねる。
「通信の傍受防御装置じゃ! これで奴らに聞かれるのを妨害できる。連絡する時はこれをつけなさい。他のみんなにも渡すと良い」
博士はそう言って、同じものがたくさん入った箱を僕に渡した。
「す、すごい博士! ありがとう!」
僕はお礼とともに博士の手を握り感謝を伝えた。
「ほほほ。なんせワシはかの有名な……というよりは、あの小僧の持ってきてくれた石のおかげで研究がすごく進んだのだ。そのお礼じゃ。ほほほ」
エップス博士は嬉しそうに唱えていた。