【ごめん。余計なお世話だった】
「やっと帰ってくれた……全く疲れるなぁ」
僕はマラカナ、外に控えていた軍人たちが撤退したのを確認してから研究室に戻ってきた。
「彼女も必死なのよ」
部屋にいるアパレル君は答える。
「しかし、本当に地底……地下深くのところにリンはいると思う?」
僕は尋ねた。
「信じられないけど、人工知能が本当に人間に反旗を起こしているなら、今までの所業も納得できるわ。」
「人を超えた存在か……」
アパレル君はリン……彼のことをどう思っているのだろうか。
僕はふと気になった。
彼が行方不明と聞かされた時も、さして驚いたようには見えなかった。
どちらかというと泣いていたのはリリフ、そしてワイズという子で僕の家で2人はわんわん泣いていたのだ。
カトレアという子はもちろん悲しそうではあったが、泣いていたワイズを抱きしめていた。
「私はリン君たちと一度、ロットの施設に入ったことがあるの。そこでは確かに、人工知能は動いていたわ。リン君のことはソルトウェルトと呼んでいた」
前にいる彼女はロットの古い研究室にマラカナの命令で行かされたというのだ。
「うーん。その時すでに目をつけられていたかもしれないね。マナを通して、きっと見られてた」
「バモールの研究所には『えーあい』はいなかったと聞いたけれど、今になって古い施設を壊したことも……これは果たして偶然かしら」
アパレル君は眉間にシワを寄せて考える。
「マラカナには分かってたと?」
「そこまでは……でも彼女や軍、国はあんまり信用できない」
僕も彼女の意見に頷いた。
「そこには同感。さて、リンがいなくなってすでに3日……僕はちょっとまた博士の所に行ってくる」
「分かったわ」
僕は部屋を出ようと立ち上がり、ドアの前まで行く……
「あ、そういえば、君はリンがいなくなってしまって……悲しい?」
「えっ?」
振り向いて尋ねた僕の突然の質問に驚いた顔を見せる女子。
「あ、いや、あまり動揺していない様子だったからさ」
僕は苦笑いして彼女の言葉を待った。
少し……下向きに顔を落とした彼女の顔。
そしてこちらに顔を上げ、口を開く。
「信頼してるから。リン君は絶対死なないし大丈夫。それに今、ここで私が挫けたら……リン君どころか誰も救えなくなるわ」
アパレルは真顔で答える。
すごく真剣な眼差しで。
感情が出ていないからといって、悲しんでないとは限らないのだなと僕は実感した。
「ごめん、余計なお世話だったね。行ってくる。あと、よろしく」
僕は部屋を出て、玄関に向かった。