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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第17章 リン…そして僕の物語は進む
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【勘弁してほしいな!】

「はぁ、黒幕の動きが速すぎる! もう目をつけられてるのか……勘弁してほしいなっ! もう!」


 僕は焦っている。

 自分が思っていたよりも相手の動きが速い。


 ここはピストシアの北にある島の一軒家だ。この研究室も含め、僕とレミナの潜伏先でもある。


「ユナ兄さん……」


 博士の機械の画面の前に座ったまま、焦った僕の後ろに、先程まで夕食の支度をしていた実の妹であるリリフは、リンの仲間の1人に通信機で告げられた事実に驚きを隠せないまま不安そうにその場に立ちすくんでいた。



「ごめん。まさかカヲルが……くそっどうなってるんだ」


 僕は焦っている。


 非常にまずい状況だ。

 果たしてカヲルを助けられるのだろうかと不安が募る。


「これからみんなが来るのよね。今日完成した試験薬……効くといいけど」


 研究室でデーターと睨めっこしている女子、アパレル・キーンことアパレル君は悩まし目にこちらを見た。

 僕は彼女の方へ顔を上げて頷く。


「うん。完全に治らなくても……今は進行が少しでも遅れてくれればホント御の字」


 2人で先ほど完成させた試験薬はその名の通りまだまだ試験中で未完成だ。

 これがどう転ぶのか不安は拭えないが、友人を助けるためにこれは賭けになってしまうが現状況ではやむを得まい。


「ねぇ、ユナ君。さっきリン君から通信機の方に連絡があって、ラマダンに一人で向かったというの。マーシャって人が本当に今回のこと、そして10年前のことを起こしたと思う?」


 アパレル君は尋ねた。

 それに僕も答える。


「洞窟に残されていた君の父の手紙だとウィルはシロだと……でもマーシャって助手はかなり高い確率で今回の張本人、そして10年前の事件の関係者だと僕は思う。そうなるとウィルも危ないな。君の両親も……もしかしたらマーシャの手に……」


「アプ……」


 リリフは心配そうに見つめた。


「大丈夫。どんな結果であれ覚悟はしてる」


 アパレル君はそう言って真剣な顔でぎゅっと口を固く結んでそのまま黙った。


「兄貴、1人で大丈夫かな」


 リリフはぼそっと呟く。

 彼女の言う『兄貴』とは一緒に育った血の繋がらない兄、リンのことである。


「リンは……どんなことがあっても死ねないから」


 僕の意味深な言葉。


「えっ!」

「えっ……」


 彼女たちは僕の言葉に驚いてこちらを見た。


「そう作られてる。これは今まで黙っていたことだけど、リン達がフェルテルで出会ったとーまはおそらく第4兵器で、10年前に何万人もの人間を巻き込み自爆したにも関わらず生きていたんだ。たぶん、レミナ同様あの3人はあれ以上年も取らない。普通の人間である僕の叔父とは違って、胎児の時点で遺伝子操作されている。リンはその最初でいきなり成功した特別な個体なんだよ」


 リン本人が知らないことも含め、彼女たちに告げた。そして僕は続ける。


「そのあと、とーま、レミナと実験は続いた。あの叔父のことだから、黒幕に目をつけられないためにリンとレミナをこっそり育てたのじゃないかな。これは今になって気づいたんだけどね。思ったよりも状況が深刻だから今のうちに伝えておくよ。もし僕に何かあった時はよろしく頼むね。さて、彼らが来る前にそろそろ本格的に準備をしようかな。まず、ベッドを空けなくちゃ……」


 僕はそう言って、重い腰を上げて立ち上がった。



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